【REPORT1/2】「こんなデザイン美術館をつくりたい ! 」1部は佐藤卓、深澤直人、中村勇吾、関口光太郎らがシンポジウム開催

2013.05.02

4月21日に、「国立デザイン美術館をつくる会」第2回パブリック・シンポジウムが、仙台で開催された。

3セッションに分かれたシンポジウムは、休憩をはさんで7時間半の長丁場。デザインに対する考え、思いが基調となっている登壇者のトークに、熱心に耳を傾ける聴衆から、国立デザイン美術館への関心の高さが伝わってきた。その模様を2回に分けて送る。

同会は、「日におけるデザインの重要性を伝えるとともに、国立デザイン美術館設立に向けて気運をたかめること」を目的に、三宅一生氏(デザイナー)と青柳正規氏(美術史家・国立西洋美術館長)が、昨年9月に設立。続く11月には、第1回目のシンポジウムが開かれ、デザインミュージアムの必要性やその意義、独自のデザインを保存するアーカイブづくりの重要性などが話し合われた。今回のテーマは、より具体的になり「こんなデザイン美術館をつくりたい ! 」。

セッション1では、佐藤卓氏(グラフィックデザイナー)と深澤直人氏(プロダクトデザイナー)をモデレーターに、3名のクリエーターが、それぞれの視点から、具体的なミュージアム像をプレゼンテーションした。

まず、中村勇吾氏(インターフェイスデザイナー)が、アーカイブに関して、モノ(製品)と共に、情報・文脈(その時代における文化・歴史・技術など)も一緒にアーカイブ化し、さらに、企業・団体・個人を単位としたネットワーク化も提案。また、ワンフロアを10年単位にした、地層のようなアーカイブの収蔵庫案も、コンセプトが明快でユニークだった。

次に、「クリエーションと教育」をテーマにした関口光太郎氏(現代美術家)が、「デザインはコンピュータ上―だけではない、手によるデザインを忘れないでほしい」と、文化継承のためにも、直接素材に触れる体験の重要性を強調。ミュージアムが造られた時にマスコットが必要となると、ユーモアを交えて、自ら折り紙を折り、目玉シールを貼って、手によるデザインを披露した。

最後に、大西麻貴氏(建築家)。「3.11によって、風景ががらりと変わってしまうことが起こった」ことから、「残すべき“風景”をつくる」ことを提案。山の風景さえも残していくことの難しさを例にとり、具体的な方法として、間伐、畑の管理に加えて、産業と一緒になった活動が必要と、アートレジデンス、カフェギャラリー工房などへと、アイディアが広がっていった。

3名のプレゼンテーションを受けて、「デザインをニュートラルに考える時代にきている。モノと一緒に土地とつながった思い、暮らしも残すことができる」と佐藤氏。また、深澤氏は、ミラノサローネが開催されることで、街中がきれいになる例をあげ、「ハプニングが起きると連鎖し、影響を与えられる。デザインミュージアムの繁殖力を期待する」。モノにとどまらず、コトのデザインも起こっている昨今。「全員デザイナー。人生をデザインしている」と、関口氏が考えるように、デザインの概念はますます拡大しているようだ。

vol.2/2へ続く。
清水早苗
  • 開会にあっての挨拶。左から、司会の柴田祐規子NHKアナウンサー、三宅一生氏、青柳正規氏
  • 左から、佐藤卓氏、中村勇吾氏、関口光太郎氏、大西麻貴氏、深澤直人氏
  • 国立デザイン美術館のマスコットを折り紙と目玉シールでデザインする関口光太郎氏
ページトップへ