第55回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展の受賞式が6月1日に行われ、88ヶ国が参加する国別展示部門で、田中功起による日本館の展示「abstract speaking - sharing uncertainty and collective acts(抽象的に話すこと―不確かなものの共有とコレクティブ・アクト)」が特別表彰(Special Mention)を受賞した。
本展示は東日本大震災をテーマに、「9人の美容師でひとりの髪を切る」(2010年)や「5人のピアニストがひとつのピアノを弾く」(2012年)、新作の「ひとつの詩を5名の詩人が書き上げる」(2013年)など、複数の人々が共同で一つの課題に取り組む姿を捉えた映像と写真を中心に構成。震災後の社会をどのように共同で作っていけるのかという問いを、見る人それぞれに考えさせる空間を企図した。田中氏は「この展示を通して目指したことは、人々の協働が生み出す可能性へのささやかな提案」とコメントしている。なお、日本館のキュレーターは蔵屋美香(東京国立近代美術館美術課長)が務めている。
田中功起は1975年生まれ。ロサンゼルスを拠点に、主に映像や写真、パフォーマンスを通した創作活動を行っており、国内外で展覧会を開催。現在、日本初公開となる映像作品「Beholding Performer, Performing Beholder」が、東京・南青山のCNAC LAB(東京都港区南青山5-4-30)で7月31日まで展示されている。
他の主な受賞者は、企画展個人部門金獅子賞(最優秀賞)はイギリスのティノ・セガール(Tino Sehgal)、国別部門金獅子賞はアンゴラのエドソン・チャガス(Edson Chagas)、今後期待の若手作家に贈られる銀獅子賞はフランスのカミーユ・アンロ(Camille Henrot)。一般公開は11月24日まで。
ヴェネチア・ビエンナーレでは過去、昨年の建築展で伊東豊雄らが手掛けた日本館が、美術展ではオノ・ヨーコ(2009年)、千住博(1995年)、池田満寿夫(1966年)らが金獅子賞を受賞している。