――マックス・ピティオンのアイウエアは、既に世界中のセレクトショップで販売が始まっていますね。
オガラ:東京では、「ドーバー ストリート マーケット ギンザ」や「リステア」といったエッジィなセレクトショップ、それにアイウエア専門の「クレイドル」「グローブスペックス」「ブリンク」「コンティニュエ」といったショップ。みんな同じようにパッション、マインドを持っている店だね。
――世界的にもマーケットが広がっていますね。
オガラ:パリの「コレット」でもローンチパーティーをしたし、カリフォルニアのハイエンドショップでも販売を予定しているんだけど、一度に全部やらず、少しずつ広げていきます。どこででも手に入るというものを欲しがる人達に向けた商品じゃないから(笑)。
メイヤー:僕には既にミュージシャンとしてのキャリアがあるから、慎重にゆっくり進めようと思っている。だからこそ成功するとも思っているんだ。僕の名前を使えば、すぐにビッグなブランドになるかもしれないけど、でも一度ビッグになると、なかなか軌道修正ができなくなる。ゆっくりと調整しながら、育っていきたいね。
オガラ:自社の工場を持っているから、いろいろと試行錯誤を重ねることもできたよね。
メイヤー:そうだね。試作品の段階では、こうしたい、ああしたいと、次々にアイデアが浮かんできたね。
――では、ジョンはデザインの部分にも参加されている?ビジネスマン的にお金を出そう、というのではなくて。
メイヤー:もちろん!
オガラ:今ある製品も、デザインとかスペックなんかを2人でいじりながら試作を重ねてできあがったもの。これからも少しずつ、グローバルフィットするようにデザインスペックを調整していきます。でも、デザイン段階では、ジョンと僕でこだわって作っていきたいんだ。かかわる人が多すぎると個性が薄まってしまう。こだわりを形にしたいんだよね。
――今回、ジョンが惚れ込んだという「ポリティシャン」以外にはどのようなラインアップがあるんでしょう?
オガラ:シェルビーとニューウェル。ポリティシャンは2サイズあります。
――ポリティシャンって、政治家の意味?
メイヤー:そうなんだ。でも今僕たちが持っている政治家のイメージとは違うね。ケネディ大統領のようなロマンティックな政治家だと思う。ジョン・F・ケネディは、アメリカのロイヤルファミリーのようなもの。まだ、政治家に憧れがあった時代の、スマートでスタイリッシュなイメージだね。
オガラ:当時の日本の政治家も結構ぶっ飛んでたよね(笑)。
メイヤー:僕は、お金のためにミュージシャンになったわけじゃない。リアリティーのあるもの、意味のあるものを作り出したいと思ったから。何かを創造するというは、とても意味のある、誇らしいことだと思っている。もちろんメジャーかどうか、売れるかどうかが大事な人達もいると思うけど、そういう考えって出来上がったモノにも表れてくると思う。
オガラ:モノ作りのこだわりの一つを披露するよ。このフレームに使っているゴールドのリベット。これ、飾りじゃなくて、フレームを支えているんだ。1940年の手法で、今、これをやるのはすごく難しい。ほら、リベットがフレームに貫通しているでしょ? こうするとすごくおしゃれになるし、フレームの調整にも便利。これは最大のこだわりだけど、クレイジーでもある。今のアイウエアのほとんどは埋め込みヒンジ。リベット1個でも失敗するとそのフレーム自体、使い物にならないからね。それに10Kのリベット。鉄より柔らかいから、とてもデリケートな工程なんだ。
(3/3に続く。)