――そこまでこだわったマックス・ピティオンなら、例えばライブでもサングラスを掛けたりする?
メイヤー:いいや、しないね。ステージでサングラスは掛けないよ。
オガラ:アイコンタクトが大事だしね(笑)。
メイヤー:音楽とこのブランドのビジネスとは分けて考えたいんだ。この二つは完全に別のもの。マックスピティオンを音楽活動に巻き込むようなことは、間違いだと思っているんだ。もちろん日中の野外のライブではサングラスを掛けるかもしれないけど、それはプロモーションじゃない。多くのセレブが、自分の名前を使って投資したことを広めようとするけれど、僕はそんなことはしたくない。
僕にとって、音楽とブランド、この二つに共通しているのは情熱だね。アルバムを作ることも楽しいし、アイデアを実行することも楽しい。
これまでも興味のあることはたくさんあったし、色々とアイデアも生まれたけれど、実行するのは無理だなとあきらめたこともいくつもある。でもそれも良いスキルになると考えているんだ。そうやって、形になることはコンセプトが間違ってないんだ、と学んだしね。
マックス・ピティオンは、ここまでくるのに、何度も何度もトミーと話し合った。こういう過程が一番大切で、これがなければ、こんなこだわりばかりのアイテムは製品化できなかったと思う。でも逆に言えば、途中で止めてしまっていたとしたら、それはそれだけのものだったということでもあるんだけどね。実際、「もう無理かな」と思ったタイミングは何度かあったけど、結局、今も「アシンメトリーなサングラスなんてどうかな?」とか、このプロジェクトへの興味が尽きることはないね。タミー、右が丸くて、左が四角とかどう?
オガラ:片方だけ大きくするのはどう?(笑)。文字を入れることもできるよ。君の名前を入れることもできる。
メイヤー:持ち主の名前を入れよう!
オガラ:ええ? それは大変な作業だね(笑)。それ、トランクショーでやったらいいかも。
メイヤー:クラシックな機械を使ってね。
――セカンドビジネスというのではなく、「本気」ですね。
メイヤー:僕は今まで自分自身のプロダクトを持ったことがないからね。これは「僕のもの」だから。CDは僕のプロダクトじゃない。でもマックス・ピティオンは自分のものだと感じている。同時にアイデアのベースはブランド自体にあって、どこへどう進めばいいか示してくれるというのも素晴らしい。
そう、音楽は僕のプロダクトだけど、ビデオを作ったりしても自分のものじゃない。それに、僕自身のやりたいようにやっているわけじゃないという部分もあるしね。ミュージシャンとしては、こうなりたいという自分のイメージよりも、こうなりたくないというイメージを持つことの方が重要なんだ。世の中の人々はみんな大して変わらないし、誰でも同じような間違いをする。だから、こうなりたくないというイメージはほとんどの人で共通だから、そういう曲のほうがインパクトがあるんだ。でも、どんなにヒット曲を出しても、利益をこれだけ上げなければ今年いっぱいで契約を切られるかも、という不安はつきまとうし、それが何かをやろうと決める際の判断基準になったりする。でも今の僕らは怖いもの知らずだね。ただクールなものを作りたいって、それだけなんだから。
オガラ:実際できているしね。
メイヤー:いくら稼げるかではなく。
オガラ:求めるのは情熱とクオリティー。
メイヤー:自分のブランドを持つって本当に気分がいい。自分のクリエーティブなエネルギーを存分に注げる場所があるって、素晴らしいことだね。
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