仕事や家庭など、様々な場面で活躍する女性達を紹介するインタビュー企画「輝く女性の秘密」。第3回は、RIE OMOTO(リエ・オモト)さん。
2009年にスタートしたコスメブランド「THREE(スリー)」。「NEW ATTITUDE FOR BEING NATURAL(ナチュラルはこんなにも自由になれる)」というコンセプトは、多くの女性の心をつかみ、現在は全国に27店舗を百貨店を中心に展開している。このブランドのメイクアップ・クリエイティブ・ディレクターを務めるのがRIEさんだ。世界を舞台に「輝く女性達」の最前線にいる彼女に、お話を伺った。
――キャリアの最初の転機は、19歳での渡英でしょうか?
デヴィッド・ボウイやセックスピストルズが大好きだったんです。それで一度はロンドンに行きたいと思っていました。そこで目にしたファッション・カルチャー誌『i-D』に大きな影響を受けました。
『i-D』に登場するモデルのメイクは、とにかくかっこいい!それに衝撃を受けてメイクアップアーティストという職業を意識するようになったんです。
――その後帰国して、岡山で美容師として仕事をしていた時に、当時、パリで活動していたイギリス人メイクアップアーティスト リンダ・カンテロ(Linda Gantello)がセミナーを開催するという情報を耳にして、渡仏。これも大きな転機のきっかけですね。
金銭的にも簡単なことではありませんでしたが、どうしても参加したかったので、えい!と渡仏しました。
――そしてRIEさんのメイクがリンダの目に止まって「パリに来ない?」と誘われたんですね。すぐに彼女についてパリコレを回るようになったと伺いました。RIEさんが世界の舞台一歩を踏み出した瞬間と言えますね。
名だたるメゾンのショーのメイクに携われたのはとても勉強になりました。その後、ニューヨークに拠点を移すことになったのは、フォトグラファー、リチャード・アヴェドン(Richard Avedon)に出会ったから。ニューヨークのオープンな雰囲気が私に合うなと思ったんです。
――では、メイクのお仕事に戻ってお話を伺いますが、エディトリアルの世界でも、『ヴォーグ』誌や『エル』誌といった世界的なファッション誌をRIEさんのメイクが飾っていますね。最近の作品の中でのお気に入りは?
『ヌメロ チャイナ』の表紙とカバーストーリーを、THREEのモデルも務めるグィネヴィア・ヴァン・シーナス(Guinevere Van Seenus)を主役にして制作したのですが、すごくきれいでかつユニーク。それから、エールフランスの広告は、今回、まったくイメージを変えました。いろいろなシーンをシリーズで撮ったので、楽しんでもらえると思います。『ハーパーズバザー』ではTHREEの新しいアイライナーを使いました。どの作品も皆、自信作ですよ。
――そういうお仕事では、どうやってメイクを組み立てていくのですか?
エディトリアルだったら、ストーリーがあって、そのストーリーの中にいるべき女性像を想像します。編集者達とはそのシーンやストーリーがどういうものか、綿密に打ち合わせます。きちんと責任を持って、納得のいく仕事をしたいんです。
昔はすごく暇な時もありましたから、来る仕事は選ばずにやっていましたけれど、段々と、選ぶこともお互いの礼儀みたいなことなのかな、と思うようになりました。現場に行けば、100%の力を出し切って一生懸命やりますが、それでもお互いに「違うな」と違和感を持つのも嫌ですよね。だからそうならないように、モデルは誰でスタイリストは誰でとか、彼ら、彼女らと一緒なら良い仕事ができると思え、情熱を傾けてやろうと思える仕事を選ぶようにしています。
大切な時間を費やすのですから、「イケてない」という仕事をするのは自分にとっても良くない事ですしね。
――忙しいと、そう思っていなくても疎かになってしまうことがありますね。
そう。毎日働いて疲れ過ぎると、仕事にかけるパワーがどんどん薄いものになるような気がするんです。だから、10の仕事をするよりも、本当に集中してできる3つの仕事をやるほうが、お互いハッピーになれると思うようになりました。
――RIEさん個人としては他に、何かお考えになっていることはありますか?
メイク、ヘアやファッションをトータルに見る小さな学校を創れたらいいなと思っているんです。既存のメイクの学校は、卒業してからアシスタントをしつつ仕事の勉強をしていくわけですが、となると、学校の役割は何なのか疑問になりますね。卒業したらすぐに実践できることを学べる学校があったらいいんじゃないかと思うんです。というのも学校ではメイクのことしか教えません。従来の学校では、テキストはアップデートされず、教え方も変わらないから、時代遅れになってしまって、そこで学んだことを仕事で生かすことができないのです。しかも、メイクもヘアも、教わるのは首から上だけ。
――というと?
ファッションやライフスタイルとかけ離れているんです。例えば一口にドレスに合うメイクといっても、赤いリップにしたほうがいい場合と、ヌーディーにしたほうがいい場合があるし、昼間なのか夜なのかによっても変わってきますよね?「どういうメイクやヘアがいいの?」というのは、着る服やシーンという背景が必要なんです。
――残念ながらこれまでの学校には、そういう発想がなかったということですね。
ええ。だから、ファッションやシーンも含め、トータルに教えられたらいいな、学校を卒業して、メーキャップアーティストやヘアスタイリストやスタイリストのアシスタントについて学ぶようなことを、学校にいる間に学べたらいいな、と思うんです。若いうちってものすごく吸収できるから、学校で、勉強と業界の現場のことを両方学べればいいのに、とずっと考えているところです。
後半では、メイクや美容についての哲学をお聞きします。