フォトグラファー、ヴィヴィアン・サッセン(Viviane Sassen)国内初の個展が都内2ヶ所で開催されている。来日した彼女に、ファッションとアートについて聞いた。
サッセンは元々ファッションを専攻し、その後写真とファインアートを学び、結果アートとファッション2足の草鞋(わらじ)を履いて、クリエーションを行ってきた。「昔からファッションには愛憎を感じる」と本人が語るように、今回展示されているようなパーソナルなプロジェクトを発展させつつも、ファッションの仕事を今後も続けていくという。
「ファッションやコマーシャルの仕事を多くこなしているので、私をアーティストとして受け入れない人もいる。けれど近年では、ファッションとアートの領域が曖昧になってきており、すべてがクリエーションという大きな枠でくくられることが多い。この現象自体が刺激的で面白いと思う」とサッセンは話す。
ファッションの仕事を行う上で、彼女の想像性を刺激するのはブランドを作り上げる様々な人達だ。
「ブランドの裏にはそれぞれ独特な『色』を持った様々な立場の人やデザイナーがいて、彼らとコラボレーションすること自体が興味深い。例えば『カルヴェン(CARVEN)』では、プロジェクトを行った際に着任していたデザイナーのギヨーム・アンリ(Guillaume Henry)が写真に理解があることから、自由にプロジェクトを進めることができた。同時に、高いクリエーティビティーを求められ、彼の意見が刺激になる。またブランドの要望を、パズルを解くように叶えるプロセスにも関心がある。その意味で『ランバン(LANVIN)』のようなエレガントなブランドから、革新的なブランドに至るまで、様々なブランドと共にプロジェクトを行うこと自体に価値がある」
「ファッションは、私にとっては遊び場、実験の場のようなもの」(サッセン)と言うように、彼女は外向的なクリエーションプロセスを楽しみながら、ファッションの仕事をこなす。反対にアートは「自分の感情を深く追求し、自らの影を浮き彫りにする作業」であると述べ、ファインアートの制作プロセスを非常に内向的な作業として捉えている。
「まるで、私の中に2人の違う人格が共存しているように、ファッションとアートは全く違ったアプローチで作り上げるの」
そんな中で、彼女のすべての仕事に共通するのは、「完全にコントロールすることができない写真というメディアの面白さ」だそうだ。サッセンは、ぱっと思いついた構図をドローイングし、現場で改良を加えながら写真へ起こす方法で制作する。想像上のイメージと出来上がった実際のイメージの乖離が写真の魅力だという。
今後はロンドンのICA(Insttitute of Contemporary Art)での展示や、スイスのウィンタートゥール美術館などでの個展を控えているが、フォトグラファーとしての新たな企画は現在未定とのことだ。ここ最近は自身の作品のカタログの出版が相次ぎ、3月から行われたロッテルダムのオランダ写真美術館での展示では、写真からビデオやサウンドインスタレーションなどへと、作品のメディアが広がっている。今後のフォトグラファーとしての方向性が楽しみだ。