海外のラグジュアリーストリートと呼ばれるブランドの多くが、リミテッドエディションの商品で話題を集める。インターネットでもすぐに完売するその手法について彼らに聞くと、それが東京の裏原ブランドに影響されていると吐露する。彼らも東京のストリートブランドのファンであり、ネットや友人を通じて手に入れてきたという。その潮流の源流にいる藤原ヒロシへのロングインタビュー第4回目、最終回。
ーー藤原さんはネットとリアルとどちらで買うことが多いのですか?
音楽はほぼすべてネットで購入します。ダウンロードして良かったらCDを購入します。ファッションは自分で欲しい物があらかじめはっきりと決まっている場合はネットで買うことが多いのですが、打ち合わせなどで時間が空いたときに、そこでたまたま見つけて買うというのが好きですね。僕自身はほとんど展示会に行かないし、展示会でオーダーして半年後に届くのを待つというのが、嫌なんです。靴でも買ったらすぐにその場で履いて帰りたいタイプ。小さい頃からオモチャを買ってもらったら、帰りのバスで開けて怒られていました。
ーー藤原ヒロシのディレクションするものは「ザ・プール青山」でも多くのファンが並びますが、並ばせる仕掛けというのは考えますか?
あまり仕掛けとは考えていないのです。ただ、欲しい物を手に入れるのに、自分自身も中学の頃は並びましたから。
ーー藤原さんも並んだ経験があるのですか?
ありますよ。京都にあった「ナイトパフォーマンス」っていう古着屋さんで、そこのオーナーがロンドンから5~6足買って帰ってくるラバーブーツやセディショナリーズが欲しくて並びましたよ。並んでいたと言っても10人ほどですが。
ーー今は“ラグジュアリーストリート”と呼ばれる動き自体もそうですが、藤原さんを代表する東京のブランドがアイテムを限定数、限定期間を設けて販売するという手法が、モードの世界を含めてファッションのグローバルな戦略になってきたような気がしますが?
確かにそういう売り方をしたのが最初は僕たちだったのかもしれないのですが、それは予算的にも、売れるかどうか分からなかったので、それだけしか作れなかったということです。作らなかったわけではないのです。今でもそれほど戦略的に考えているわけではない。自分たちがやりやすくて、着て欲しいと思う数をそのキャパシティでやっていただけです。自分たちが出来るキャパシティが僕にとっては重要です。
ーー今、準備中のプロジェクトは何かありますか?
年内か来年あたりにSNS的なWEBメディアのローンチを準備しています。SNSは良いところもいっぱいあるのですが、悪いところは本当の情報が、素人というか、関係ない人の書き込みが入っていくことで、信頼感がなくなっていくという側面があります。それを排除して、ある程度セミプロ的な人たちにセグメントして、その人たちの興味のある物だけを紹介していくというメディアを考えています。今の誰でもコメントできるという流れの中にあるSNSではなく、プロの人の専門紙的なものを考えています。空気の読めないコメントとかのないSNSです。
ーー不快なコメントは関係なくても、読むだけでストレスになりますからね。
なりますよね。自分に関係のないものでも、全然論点が違う長文コメントがあったりすると。そういうのは排除して新しいメディアを立ち上げる予定です。
ーー普段、自分自身で情報を取り込むメデイアは何ですか?
とは言ってもインターネットと、食事に行くときに読む『週刊文春』とか『週刊新潮』とかですかね。今読んでいる本は『黒い迷宮 ルーシー・ブラックマン事件15年目の真実』(リチャード・ロイド・パリー著)です。当時の六本木の話とかが面白いですね。
ーーSNSはご自身でも投稿しているのですか?
FacebookとInstagramはやっています。インスタはアップしても2、3日ですぐに消します。自分も昔の写真とかがいつまでも残っているのは嫌だし、過去を他人に見られたくないし。“いつまでも、あると思うなアーカイブ”です。
ーー久々に「ミルク(MILK)」のショーの音楽を手掛けられるのとか?
昔から「ミルク」のショーの音楽は担当していたのですが、久しぶりにファッションショーの音楽ですね。最近はショーの音楽というと、ディスコ的に曲が途切れないスタイルが多いのですが、「ミルク」の場合はシーンごとに1曲ずつという選曲で流れを作るやり方で、それは今回も一緒のようです。いわゆるマッシュアップ的なものも作っています。
ーー「ミルク」のショーのバックステージは、FASHION HEADLINE編集部も取材する予定ですので、よろしくお願いします。
■interview & text:野田達哉