ストリートでゲリラ的にファッションショーを行う「ザ・ハプニング(The HAPPENING)」が11月5日、渋谷センター街とSHIBUYA TSUTAYAで17SSコレクションのインスタレーションを行った。
同プロジェクトは2014年に第1回目が行われ、今回が6シーズン目、6回目の開催となる。作品を披露したデザイナーは計7名。KOSHIRO EBATA(江幡晃四郎)、MEG MIURA(メグミウラ)、TAKUMA(タクマ)の3名が前回から引き続き参加。セレクトショップのdog、XANADUからの推薦デザイナーとして、VANESSA NAOMI(ヴァネッサ ナオミ)、QUALWIN(クオルウィン カツ アヤノ)、TENDER PERSON(ヤシゲ ユウト)とマスクデザイナーのKOTARO SAKAZUME(コータロー サカズメ)の4名が初参加し、各デザイナー2~6体、計23体の作品が発表された。
渋谷センター街では初めてのストリートファッションショーとなった今回のプロジェクトは、渋谷センター商店街振興組合、渋谷観光協会、SHIBUYA TSUTAYAが全面的にサポート。2020年の東京オリンピックに向けて、渋谷からの文化発信を目的にファッションのインキュベートを目指すTSUTAYAが中心となって、これまで許可の下りなかったセンター街でのファッションショーを警察の許可を得て実現した。
ショーは16時にスクランブル交差点の正面のTSUTAYAからスタート。センター街約80mをモデルとダンサーが警備員に守られながらパフォーマンス。その後TSUTAYAの6,7階のブック売り場、カフェを使用してインスタレーションが行われた。
発表されたコレクションは「山本寛斎をリスペクトしている」というヴァネッサナオミの着物や帯、資材をチャンプルーしたアッサンブラージュのようなコスチュームからスタート。構築的なシルエットを柔らかな曲線とフォトプリントでデニムの新しい表現を試みたKOSHIRO EBATA、アフリカのトライバルなモチーフをクチュールラインとして立体的に仕上げたMEGMIURA、配水管のプラスティックパーツを使いDIYとファッションをジョイントさせたTAKUMA、レースとメタリックな素材をクラシカルなドレステクニックで未来的に表現したQUALWIN、東京らしいストリートファッションとモードをカットアップしたTENDER PERSONと、見せ方はイベントとしての統一感が図られつつも、それぞれオルタナティブな作品が陶器のマスクとコラボレーションされ、発表された。
前回は地下鉄銀座線のコンコースと車両内、今回は日本一の雑踏を誇る渋谷センター街でと、まさにハプニング性は初志貫徹。しかしながら、いずれも公共の場所での開催で、ゲリラと言えども行政への許可を得ており、その分制約も多く「今回は音楽の使用が難しく、実現できなかった」と同プロジェクトを主宰するスタイリストの伏見京子氏。今年9月には上海モダンアート美術館McaMに招待され、16AWコレクションを中国のパフォーマンス集団と共演するなど、活動は海外でも知られ始めているが、路上でのゲリラパフォーマンスは今回が最後となる予定。
「若手デザイナーがお金をかけずにパブリックなスペースでショーを発表する方法として、路上でのショーを始めたが、最近はストリートでのショーが増えており、表現の方法を変えていく必要があると考えている」と伏見氏。当初は日本国内のファッション業界の若手のインキュベーションのシステムに一石を投じるべくスタートした同プロジェクトも3年が経過。今シーズンはJFW(一般社団法人日本ファッション・ウィーク推進機構)が主催するAFWT(アマゾンファッションウィーク東京)の公式スケジュールとして、パリからのゲストデザイナーKOCHEが原宿で路上ショーを開催した。
クラウドファウンディングでのショー開催など、いち早く社会の動きをとらえた運営で刺激を与えてきた同プロジェクトも新しいステップを迎えている。
Text: 野田達哉