企業に現代アートを知ってもらい、“買う”“出資する”などのアクションに繋げるプラットフォーム、「ジーカレント(G current)」が新たな展開を見せている。代表の石井俊氏は、ギャラリストの小山登美夫氏を招き記者発表を行った。現代アートと企業の関わり方に変化を与える装置としてG currentがどのような役割を持つのか、石井氏の活動とともに紹介したい。
G currentの創設には「様々な企業が現代美術に参入し、企業と現代美術の接点を増やす仕組みをつくり、国内現代美術の国際発信力、競争力の向上に寄与したい」という石井氏の願いが込められている。現代アート業界の第一人者である小山氏は、「日本にはコレクターがいない。お金を持っていてもアートには使わないんです。でもいい作り手はたくさんいるので、そこをつなげるサービスが必要とされている」とコメント。この状況を変えるべくして生まれたのが、新サービスの「フェイバリット(Favorite)」。参加企業がいつでも専用サイトからお気に入りのギャラリーやアーティストを見つけ、作品を購入することができるシステムだ。さらに、気軽にアートに参入できるツールとして、クラウドファンディングで制作資金を募る試みも始まっている。
G currentのサポートのスタイルは企業により異なり、酒造会社の獺祭の場合は、国際的なアートフェアでのお酒の提供、別の企業ではアーティストとのコラボ商品の制作など様々。企業の数だけサポートの形も変わり、現在、石井氏の理念に賛同した17の企業とサービスが名を連ねる。
「海外のアートシーンには“大人”の人が多くて、60とか70代の人が若いアーティストのアバンギャルドな作品を買うのは珍しいことではない。仕事をリタイアした人がアートを趣味にして収集する、そんな文化的な土壌があるんですよ。いまの日本にはそういう要素がなくなって子供っぽくなっているので、そこを変えていきたい」と小山氏。10月20日、小山氏は六本木に新しいアートスペースをオープンする。ここが“大人”の集う文化サロンとなっていくことだろう。
現代アートをめぐる環境は日々変化している。鑑賞することから一歩踏み込む、G currentの試みに今後も注目していきたい。