スマートフォンアプリで人気のLINE(ライン)が、国内外の気鋭デザイナーやブランドと、有力なバイヤー・小売を繋ぐBtoB向けのサービス「LINE Collection(ライン コレクション)」を本格始動させる。8月27日、東京・渋谷ヒカリエにてプレゼンテーションが行われた。
“LINEが変えるファッションの未来”を掲げる「LINE Collection」は、LINEの100%子会社となるBonsai Garage(ボンサイ ガレージ)を通じて、日本にまだ上陸していないブランドを日本のバイヤーやセレクトショップなどの小売店と繋ぐというもの。完全会員制のオンラインオーダーシステムを採用しており、いわば24時間365日いつでも開かれている展示会をWEB上に作りあげた。
日本に上陸させるブランドは洋服だけでなく、ライフスタイルの全てをファッションととらえ、アクセサリーにバッグ、インテリア、雑貨など幅広いカテゴリーで展開。NYのアパレルブランドからイスラエルや香港のアクセサリーブランド、オランダのバッグブランドなど、すでに53ブランドのアイテムが紹介されており、今後は、月に10ブランドを目処に増やしていき、海外で活躍する若手の日本人デザイナーやハイエンドな海外ブランドなども紹介していく予定だ。
これまで無料通話・無料メールスマートフォンアプリを軸に、スマートフォンECサービス「LINE MALL(ライン モール)」、LINEで繋がっている友だちにギフトが贈れる「LINE ギフト」や商品を格安で購入できる「LINE SALE」などBtoCやCtoC向けのサービスを展開してきたLINE。BtoBのサービスを展開することについて、LINEの上級執行役員・島村武志氏(コマース・メディア担当)は「異色のサービス」と語るが、そこにはLINEが展開するサービスの根底に流れる一気通貫した思いがある。
「LINEが何故、BtoBのサービスを始めるの? と、いろいろな方から聞かれます。でも、そもそもLINEは人と人とをインターネットを通じて“繋げたい”という思いからスタートさせたものなんです。今回は、人と商品の“繋がり”を作っていきたいと思っています。これから、さらにこの分野の事業を発展させたいと思っているので、(LINE Collectionは)最初の一歩ですね」と今後の展望について語っていた。
また、この日はBonsai Garageの代表取締役の首藤伸治氏も出席。これまで様々なブランドでブランディング・コンサルティングを行ってきた首藤氏は「ファッションというのは自由であると思っているのですが、ことビジネスにおいては閉鎖的です」と、ファッション業界の現状を説明する。そんな首藤氏が「LINE Collection」の役割として掲げるのは、3つの“開放”だ。
ひとつは“市場の開放”。進出資金の問題や信頼できるパートナーとの繋がりが持てないことで、日本進出を断念するブランドはまだまだ多い。「LINE Collection」では、首藤氏を含めたバイヤー経験者4人が厳選した世界各地のブランドを、WEB上だけでなく、日本国内に専用のショールームを構え、文字情報や写真だけでは伝えきれない展示会で実際に目にした時のような付加価値と共に紹介していく。
2つ目は“在庫リスクからの開放”。現地での買付けの際には、1度に大量の買付けを行わなければならなかったが、「LINE Collection」では、試験的に少量を買付けることができるようになり、トレンドの移り変わりが激しいファッション市場における大きな悩みの種である在庫リスクを回避することができるようになる。首藤氏は「常に新鮮な売り場を作れる環境を提供したい」と熱を込めて語っていた。
3つ目は“コミュニケーションの開放”。一般消費者がECサイトでショッピングを楽しむのとは違い、ビジネスを展開する上で実物を手に取って検討したいと思うのは必至。WEBとショールームの2つの展示会を用意することで、ショールームに足を運んだバイヤーがオフィスにいる決済者とライブ連動でき、情報を持ち帰らずにその場で意思決定を行うことが可能となる。
国内外現実と仮想現実を繋ぐことで生まれる3つの“開放”は、今後、国内のファッション市場に大きな影響を与えることになりそう。最後に、首藤氏は「昔のようにパーティーやイベントに行くために特別な服を買う、という一般消費者の方が少なくなってきている様に感じていて、ファッションの小売業界の人たちと話していると、やっぱり『経営が厳しい』という話になるんです」と現状のファッション市場の喘ぎを明かしつつ、「ファッションをもっと楽しんでくれる人たちが生まれるような環境を作っていきたい。そのために僕たちは頑張っています」と熱を込めて語っていた。