■均一ではない美しさと日本発のウェアラブルデバイスである気概
ヴェルト(VELDT)の哲学は、現在展開するウェアラブルデバイスからも感じられる。存在感ある3型のウォッチには「Ripplet」「Moon Ray」「Silky Ice」など、自然の中にある現象から名付けており、文字盤にデザインされた24のLEDは「SAKURA」「FUJI」「DAIDAI」など和名が付けられている。これらのLEDが文字盤上で光ることで、天気やスケジュールを知らせてくれるのだ。
株式会社ヴェルトの代表取締役CEOの野々上仁さんは、この優しい光の採用にもヴェルトの美学が込められているという。「この文字盤が、デジタルとアナログの境界線なんです。ヴェルトのLEDは発色にばらつきがあったりする。光の3色原色をブレンドしながら、意図的に揺らぎのある発光を作り出しています。我々の答えは“均一じゃないほうが良い”ということ」と野々上さんは語る。
8月26日から新たに展開される「ヴェルト セレンディピティ(VELDT SERENDIPITY)」のシリーズは「Vesper(宵の明星)」と名付けられた。白、橙、紺と3色用意されたベルトには、イタリアのアリゲーターを採用。この3色が選ばれたのも、昼から夕暮れを経て、夜になるまでの空の色合いをイメージしているとのこと。
■ヴェルトが考えるウェアラブルデバイスの役割
「私達は情報に溢れ、多くの選択肢に囲まれて暮らしています。あまりに多くの情報があるが故、次に何を選択するか迷いがちです。ただ、重要な情報がWEBを介してやってくるのも事実。だから、我々のプロダクトは何が重要な情報か判断するための情報をウェアラブルデバイスの中で表示しています。手元で情報に対するアクションを判断が出来れば、スピード感も変わって来る訳です。その時間が積み重なれば、周りを見る時間に繋がります」と野々上さん。
「ヴェルト セレンディピティ」が手元にあることで、デジタルを介して届いた情報をタイムリーに得ることが出来る。例えば、たった今届いたメールに対して、今返信すべきか、後でもよいのかを判断することが、手元をちらっと確認するだけで出来るのだ。結果、スマホやPCの画面を見る回数が減り、今目の前にある物事や風景と対峙出来るというのがヴェルトの考えだ。
最後に、野々上さんが考える「ヴェルト セレンディピティ」とは何かを問うと「僕にとってのヴェルト セレンディピティは、次の時代の新しいエレメント。過去を否定するのではなく、過去と親和性のある形で存在するものです。過去へのリスペクトの気持ちを、フェイスのデザインにも込めました。フェイスの中央にある『V』の文字は、デジタルを象徴するような左右対象のフォルムではなく、あえて左右非対称の『V』を採用しているのもこのような理由からです」と手元のヴェルトを見せてくれた。
実際ヴェルトでは、昔からあるものを否定するデジタルの在り方でなく、昔からある良き物をリスペクトしながら、新たにデジタルの要素を入れている。デザインにアナログ時計の様式を採用しているのも「革新のあり方として、古き良きものと新しいデジタル要素の融合というスタイルが正しいのではないかという思い」からだという。
想像しえなかった物事との出逢いを損なうことなく、デジタルの恩恵を得るための場所。それが「ヴェルト セレンディピティ」が考えるウェアラブルデバイスの姿であり、これからのデジタルとの付き合い方なのかもしれない。溢れる情報をどのように受け取り、どう情報に反応するのかを決めるのはユーザー自身であるという哲学がヴェルトからは感じられた。
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