【メディアの未来を考える】デジタルネイティブに向けたメディア『コスモポリタン』のスタイル--ハースト婦人画報社2/3:横井由利

2016.05.03

ハースト婦人画報社は2016年1月21日にデジタルメディア、コスモポリタン日版(http://www.cosmopolitan-jp.com/)をローンチした。

同社代表取締役社長&CEOのイヴ・ブゴン氏(以下ブゴン氏とする)が、「我が社は雑誌も発行するデジタル企業となることを目指す」と挨拶した通り、デジタルメディアへの大きな一歩となる、コスモポリタン日本版を創刊した。

『コスモポリタン』は1886年アメリカで創刊した女性向けの総合誌で、2016年頭にデジタルメディアとして日本に上陸した。「”Fun Fearless Female” (楽しく大胆な女性)」をイメージする『コスモポリタン』は、LOVE、ビューティライフスタイルエンターテインメントファッションをテーマに、世界中の女性をエンパワーしているメディアだ。

■ユーザーの時間を競合と奪い合うデジタルメディア

雑誌制作会社からIT企業に移り、キャリアを積んだコスモポリタン日本版の白重絢子編集長に紙媒体とデジタルメディアの違いについて尋ねた。

「私が紙媒体を語れる立場ではありませんが、紙媒体は、その雑誌のスタイルのファンであることが大前提で、お金を払っても読みたいと思わせる世界観があり、常に何かを提案する存在なのではと感じています。一方デジタルは、ユーザーの時間を競合同士で奪い合っている。ユーザーを振り向かせるには、今何にユーザーが興味を持っていて、何を求めているか、ユーザーのインサイトを知り、ニーズを満たす記事をつくることが大切だと考えています。また、スピードを意識して記事をアップすることも大切にしています。さまざまなプラットフォームに流れていく記事を、どれだけの人が見つけてくれ、面白がってくれるが勝負だと考えています」と白重編集長。ユーザーの気持ちを知るために、編集スタッフはTwitterやInstagramなどのSNSも含めたあらゆるサイトをチェックし、時にはコスモポリタンのターゲットと思われる人たちと会いコミュニケーションをとっている。

■デジタル世代のリアルなニーズに応える記事をつくる

コスモポリタンのターゲットは、20代前半から30代前半。デジタルネイティブと呼ばれる人たちだ。彼女たちは、物心ついた時には身近にコンピュータがあり、大人になる前にスマホを手にしていた世代。たとえば、コスモポリタンで最も定評のあるLOVEのコンテンツでは、Tinderを使って出会った女性の体験談をコラムにするなど、デジタルネイティブらしい出会い方をしている。

「コスモポリタンのユーザーは、今、何に引っかかり、何に悩んでいるのかをきちんと知ることが大切だと思っています。女友だちのような存在となりたいと思っています。聞き上手な友だちには、いろんなことが相談できるように……。」という白重編集長も、デジタルネイティブ世代だ。

■デジタルと紙媒体の編集体制における違いとは

デジタルと紙媒体の編集部の体制にも違いがある。ヒエラルキーが存在しないというのもデジタルならではの発想で、プロデューサーだろうと編集長だろうと、いちスタッフだろうとフラットな関係性で成り立っている。データから得られる結果も大切にしているので、意見を裏付けるデータを見つけて示せば、誰でも意見を言うことができる。

アップル社のジョブズがいつもカジュアルなスタイルだったのは、社員と同じ目線でいることの証なのだろう。これがデジタルのスタイルに違いない。


※インサイト=洞察したい相手の視野から得られるその人の気持ち


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Yuri Yokoi
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