全日空のスターアライアンスや、日航のワンワールドといった言葉を聞いたことがあるだろうか。
航空会社のグローバルネットワークによりコードシェア(他社のフライトにも搭乗できるシステム)したり、マイレージを他社でも使えるサービスだ。利用者にとっても、企業にとってもウィン・ウィンのシステムとして、今では当たり前になってきている。
■デジタル時代が導いたアライアンスの発想
デジタルの時代、こうした「アライアンス」という発想が、出版社同士でより機能するようになるだろうという、ハースト婦人画報社代表取締役社長&CEOであるイヴ・ブコン氏の考えを裏付けるように、講談社とハースト婦人画報社、それぞれの現場から提案された企画が2016年3月2日スタートした。
講談社のwebマガジン『ミモレ』(http://mi-mollet.com/)のショップコーナーが『エル・ショップ』( http://elleshop.jp/web/contents/top/ )と直結したのだ。
『ミモレ』の社外編集長の大草直子氏(講談社初の社外編集長)はじめ、人気のライターやスタイリストたちが、ECサイト『エル・ショップ』で扱っているアイテムを使いコーディネートを提案し、お気に入りの商品があれば、『エル・ショップ』へ飛びお買い物ができるシステムだ。
『エル・ショップ』は、2009年にスタートし、出版社では先駆けとなったECサイト。『エル・ショップ』の特徴は、エルのエディターやバイヤーが選んだ商品で構成され、必然的にブランド数もアイテム数も絞り込まれた、セレクトショップ型のECサイトだ。
また、他のECサイトと一線を画しているのは、カスタマーレビューのコーナーがないところだ。ユーザーの反応がレコメンドアイテムなど商品動向を左右せず、目利きエディターとユーザーとの信頼関係で成立しているサイトだ。
大草直子編集長率いる『ミモレ』は、リアル(現実と実用)を追求する、純粋webマガジンとして2015年1月にスタートした。webの強みを発揮し、動画による具体的な着こなしを提案したり、会員になると時間限定で編集長やスタッフと、ファッションやビューティなどのお悩み解決チャットができるという。
こうしたリアル感が、ユーザーの心を掴み人気を博している。ミモレの創刊当初は、読者が掲載商品を手に入れたいと思った場合は、すぐに購入できるように、それを扱うサイトへのリンクを貼り、他社サイトでも飛べる仕組みにしていたが、『エル・ショップ』での購入頻度が高かったことから、ユーザーの親和性が強いと感じ、手を組んでみようという話が成立したのだ。
『エル・ショップ』がセレクトしたアイテムを、『ミモレ』がその良さを引き出し、ユーザーに支持されたアイテムは人気商品となる。こうして理想のトライアングルが形成され、ウィン・ウィン・ウィンの関係が成立するのだ。
競合他社という壁に風穴が開き、新しい時代の風を感じさせる、デジタル化へマインドセットが進む過程に起きた「ちょっといい話」と捉えるべき出来事に違いない。
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