9月23日、「アンリアレイジ(ANREALAGE)」がパリファッションウィークで初のショーを開催。15SSウィメンズコレクションを発表した。テーマは光(SHADOW)。会場は、パリのショー会場としてもおなじみのエコール・デ・ボザール(国立美術学校)が選ばれた。
白い床が設けられた会場に、2名のモデルが連れ立って登場。パッチワークのジャケットやスカートの裾は斜めにカットされ、フロントは白、バックは黒。これは、服に一方方向から光が当たり影が伸びる様子を表現しており、白の部分はエプロンのように取り外しができるようになっている。「実体がなくなっても、影(黒の服)が存在し続ける」服と、森永は言う。服に施されたパールやスタッズからも黒い影が伸び、靴にも影がついてくる。
ショーの中盤、真っ白で、シメントリーなデザインのワンピースを着たモデルが登場。会場の真ん中まで進んだ彼女達を、青白いライトが包み込んだ。しばらくして、光の中から出てきた彼女達の服はグレーに色づき、腕の影がそのまま服に焼き付けられていた。会場からは拍手が沸き起こった。
これは、13-14AWコレクションで使用した、フォトクロミックという技術を進化させたもの。白の服にはカプセル状の染料が施されており、光の中のUV波に反応して変色する。「当時はパステルカラーしか表現できなかったが、白の対局の色である黒にしてパリで発表したいと思い、2年かけて開発を進め、先月中旬になってやっと出来上がった」と森永はその熱い思いを語る。光で色が変わる服。白い服に、上から重ねた服や腕の影を焼き付けられて、違う服に生まれ変わる。
最後に出てきたモデル達が纏う白い服には、UV波を放つレーザーポーインターが当てられ、プログラミングされた動きにより、パッチワーク柄が描かれていった。
森永が初期の頃から好んで用いてきたパッチワークやレーザーカッティングの技法に、最新の技術が加わり、「これまでの集大成を新しいことにつなげることができた」と話す森永氏は、初のパリでのショーを終えて、涙を見せた。
「80年代に日本人のデザイナーが進出したのは今や伝説になっているが、日本のファッションが持つ技術や視点により、欧米とは違う服が作れる。きれい、きれいじゃないという価値観じゃない、異なる価値観を見せていくことで、何か変わるのではないか。世界のファッションに一石を投じたい。黒の衝撃というものに対して、黒の象徴である影、そして光をテーマにパリで発表したいとずっと考えていた」と語り、「このショーがちゃんとビジネスという形に着地するよう考えていきたい」と意欲を見せた。
ショー演出は金子繁孝、ヘアメイクは加茂克也、スタイリングは山口壮太、音楽は杉原一平と、これまでアンリアレイジを支えてきたメンバーがパリに集った。レーザーの光を操ったのは、ライゾマティクスの真鍋大度。森永とは、昨年11月に開催されたファッションとアートの短編映像祭「アスヴォフ・トウキョウ(ASVOFF TOKYO )」で、フォトクロミックについて語り合った仲だ。