『暮らしのおへそ』を立ち上げ、魅力的な人のおへそを追い続ける編集ディレクター・一田憲子さんに、同誌について、おへそ的暮らし、モノを人へつなぐこと、について聞いた。
--『暮らしのおへそ』にかかわってきた9年で、一田さんご自身が暮らしを見つめ直すことはありましたか?
若い時は、ブランドや新しいものなど、人の目を意識したモノ選びをしてしまうことも多かったんです。器一つとっても、作家モノの器を好んで選んでいました。でも今は、うちのお料理、例えば肉じゃが(笑)、がおいしく見える器を選ぶようになりました。自分がよければ、それでいいんじゃないかなって。でも、すごくたくさんの器を購入したからこそ、この境地にいたったかもしれませんけどね。
--自分が満足すればそれでいい、なんだかホッとする言葉です。伊勢丹新宿店で開催している『暮らしのおへそ』のリアルショップ「おへそ的、買い物のすすめ展」も既に3回目。回を追うごとにお客さんが増えているそうですね。
同誌で取り上げたショップやモノを集めたイベントです。イベントで気に入ったモノを持ち帰られたことで、それを通して新しい習慣が始まる。それってなんだか楽しいでしょう。『暮らしのおへそ』を知らないお客様も多いので、同誌のこと、出展店舗やモノのことを、大きなパネルで展示したんです。そうしたら皆さんじっくりと読んでくれました。長い時間を過ごされる方が多くてうれしかったです。
--同誌の読者層を考えると30代半ば以降の来場者多いかな、と思いきや、20代の若いご夫婦から60代、70代と幅広かったそうですね。彼らの反応などを見て感じたことはありますか。
同誌の愛読者、またモノ好きな方が主流だったと思いますが、暮らしが固まってない20代前半のご夫婦なども来てくださいました。出展しているご店主や職人さんが店に立つと、やっぱりすごく売れるんです。商品に愛があるので説明もすごく丁寧、だからお客様も納得して購入してくれる。そんな風に、同誌で取り上げた店主や作り手を読者へと直接つなげたことは、とても良かったなあと思っています。
【多くの人が待ち望んでいたネットショップがスタート】
9月24日に伊勢丹新宿店とのコラボレーションによりオープンするオンラインストアは、同誌にとって初の試み。“おへそ的買い物”を少しでも多くのお客様に体験してもらいたいと、本誌でも人気の高い、たかはしよしこの「エジプト塩」、デザイナー・下川宏道が手掛ける「himie」のアクセサリーなどが登場する。
--今秋から伊勢丹オンラインストアでも『暮らしのおへそ』がはじまります。ネットショップに期待することはありますか。
地方に取材に行くと『暮らしのおへそ』に出ていたお店やモノが「欲しいけどここでは売ってない」とか「東京は遠いから…」の声をよく聞きます。また都内に暮らしていても子供が小さくて自由に外出ができないお母さんも多い。そんな人がネットショップを喜んでくれるんじゃないかと楽しみです。お店で買物するのが理想かもしれないけれども、欲しいモノを手に入れることで、暮らしに楽しいおへそができることのほうが大事。そしてモノだけを売るだけではなく、商品背景をご紹介する記事も充実させていく予定です。
--最後に、一田さんの暮らしのおへそを教えてください。
まず朝6時に起きて必ず半身浴をすること。夜型から朝型に変えることができたのも朝風呂のおかげです。また朝食は必ず同じものを食べること。横浜にある「on the dish」のパン、ヨーグルト、紅茶、季節のフルーツコンポート、文旦のお手製ジャム。このセットを食べるとすごく落ち着くんです(笑)。そうそう、玄関に香りをたくことも取材先で聞いて、おへそに加わりました。おいしい、気持ちいい、がベースのおへそが多いですね。
【一田憲子 プロフィール】
OLを経て編集プロダクションへ転職し、フリーライターになる。『暮らしのおへそ』(主婦と生活社)をはじめ、『大人になったら着たい服』(主婦と生活社)、『LEE』(集英社)や『和楽』(小学館)など、多数の女性誌で活躍。著書に『扉をあけて。 小さなギャラリー』『一田食堂』(共に主婦と生活社)など。