「食はエロスである」との表現からは、肉汁溢れるステーキや、それを喉の奥に流し込む芳醇なワインをイメージしがちである。しかし実のところ、生きる衝動を駆り立てる最たる食は、焼き立てのパンが並ぶ朝食かもしれない。
京都・今出川通りに店を構える「ル・プチメック 今出川店(Le Petit Mec IMADEGAWA)」(京都市上京区今出川通大宮西入元北小路町159)には、朝8時の開店と同時に、おいしい朝食を求める人々が列をなす。
商品はもちろん持ち帰りOKだが、店内でいただくこともできる。トレイに載せたパンをレジで店員に渡した後、会計を済ませてテーブルに着席していると、ちょうどいい塩梅に温めた商品をドリンクと共に運んできてくれるのだ。
店内に充満する小麦とバターの匂いは、パンの到着を待つ時間を香ばしく彩り食欲をかきたてる。ほどなくして注文したものがテーブルに登場する頃には、食を楽しみたい気持ちと同時に、今日という1日を幸せな気持ちでスタートできた喜びがいっぱいに膨れ上がっている。
そして口にした途端、”Que C’est bon!” なんて思わずフランス語で感動を表現しそうになるのは、店内に流れるフランス語ラジオや、壁を埋め尽くすフランス語のサインの影響。更にパンのプライスカードにだって、日本語と一緒にフランス語が並ぶ。そう。ここはまるでパリのブーランジェリーなのだ。
なんでも、フランスをこよなく愛すオーナーが、こだわりにこだわりを重ねた結果誕生した店なのだそうで、ひとたび店内に足を踏み入れるや、ヨーロッパ旅行中であるかのような錯覚を覚えるほど。
ちなみに、今出川の他、東京・新宿などにも店を出しているので、至福の朝食タイムを満喫したい人は、どうぞお近くの店舗へお立ち寄りあれ。「タケオキクチ渋谷明治通り本店」の併設カフェを手掛けるのも実はここ。いつもとは異なる朝の風景を楽しむことで、そこから始まる1日が新たな輝きを帯びてくることだってあるかもしれない。