イタリアのトリエステで毎年7月に開催されるファッションコンテスト「ITS(イッツ=International Talent Support)」。世界21ヶ国から集まった1000点近い応募作品の中から、今年、日本人若手デザイナー4名がファイナリストに選出された。イタリアンヴォーグ誌をはじめとするファッションジャーナリストやデザイナーなど、一流の目利きたちが注目するハイレベルなこのコンテストは、開催以来、多くの日本人受賞者が活躍することでも知られている。ITSに魅かれ、現場の空気を知るために会場へ赴いた伊勢丹新宿店TOKYO解放区の担当バイヤー、寺澤真理による現地レポートをお届けする。
■世界で活躍する若手の登竜門ITSに注目した理由
私がITSに行くきっかけとして、リトゥンアフターワーズ(writtenafterwards)のデザイナー山縣さんが主宰する「ここのがっこう」※1の存在があります。以前から、生徒さんの作品の講評をさせていただいていて、RYOTAMURAKAMIの村上亮太さんやマラミュート(malamute)の小高真理さんが在学していたことからも「ここのがっこう」のレベルの高さには注目していました。その「ここのがっこう」が力を入れているのがITSへの応募で、卒業生の佐藤友浩※2さんや中里周子※3さんが入賞したITSとは一体どんなコンテストなんだろうって。ITSについて色々調べるうちに、ITSの世界観にも魅かれて、ぜひ現場に行ってみたいと思ったんです。
■現地で迎えられたITSの“ファミリー感”
ITSに行く前から、このコンテストはデザイナーの創造性や個性、“クリエーション”の部分をすごく尊重している印象を持っていました。それで、実際に現地に行ってみて、コンテスト全体の“ファミリー的な雰囲気”にまず感動しましたね。
ITSの参加者たちで記念撮影
とにかく運営側がプロフェッショナルで、出演者(応募者)がコンテストでのびのびとプレゼンできるよう、きめ細やかなサポートが行き届いているんです。例えば、ITSはファッション、アクセサリー、ジュエリー、アートワークの4部門から、応募者がどの部門で応募するか自分で選ぶのですが、運営側が「あなたは別の部門も応募してみたら」と提案するケースがあるんです。本人も気がつかない才能の芽を見極めて掘り起こそうとする“勘の確かさ”と、応募者一人ひとりと丁寧に向き合う運営側の姿勢から“あったかさ”が垣間見えました。他にも、出演者同士でコミュニケーションが取りやすいよう、会期中はみんなでランチビュッフェを囲むなどの配慮がなされていて、会場内はピリピリした印象はなく、みんなとても打ち解けたムードでしたね。
それから、ゲスト(ファッションジャーナリストやブランドのデザイナー、スポンサー企業など)に対しても運営側の工夫は徹底されていて、ゲスト向けのITS観覧ツアーが完備され、すべてサイトから予約ができる点もすごいと思いました。専用アプリをダウンロードすると宿泊先や食事の案内、展示スケジュールまでが一目で確認できるなど、とてもスマートで分かりやすい工夫が凝らされているのです。また、ITSの事務局には歴代の受賞作品が保管されているので私もアーカイブツアーに参加し、ITSのコンセプトや歴史について理解を深めることができました。
歴代ITS受賞作品が見られるアーカイブツアーに参加
■世界中から集まった才能と出会えたITSでの3日間
世界中から集まった40人ほどのファイナリストたちの作品は、どれも本当に素晴らしかったです。粒ぞろいで個々のレベルが高く、作り、素材感、センスなど様々な要素をバランスよく備えていて、いわゆる新人っぽい粗削り感はありませんでしたね。これは、バーバラ・フランキン(Barbara Franchin)さんをはじめとする主催者側の審美眼の確かさと、采配の妙があってこそだと思います。
またITSでは、応募者自らが英語で作品のプレゼンを行い、個人ブースが設けられているのでゲストの質問に直接答え、スポンサー企業に売り込みをする機会が持てます。日本人の場合、語学の壁はあるかもしれませんが、作家として世界を舞台に活躍する上で、自己アピールの方法を学ぶにはとても貴重な経験だと思いました。実際にここで有名メゾンとコネクションを作り、契約をする人もたくさんいるようです。
ITSのファイナリストと、バイヤーやジャーナリストが直接話せる場もある
■伊勢丹新宿店TOKYO解放区で伝えたいITSファイナリストたちの魅力
ファッションが持つ“豊かさ”、“楽しさ”のようなもの。たとえば、ワクワク感であったり、みずみずしい想像力を包み隠さず形にしたものが“ファッション”なんだ!という感覚が伝えられればいいですね。ITSには、そういった豊かさがあるのが魅力だと思います。
ファッションって、機能的で実用的な面を追求することが必要不可欠でとても大事なこともありますが、それだけではないと思っています。ITSのデザイナーさんたちと作品が発する、純粋にファッションを愛し、楽しむエネルギーは、TOKYO解放区のコンセプトととても共通し親和性があると感じているので、それをそのまま受け取っていただけたら嬉しいです。商業ベースだけに捕らわれず、のびのびと好きなものを自由に創る感性に触れる“場”として、そして、ファッションが与えてくれるHAPPYやFUN、PEACEFULなマインドや感性に触れたり知ることのできる場・機会に相応しい役割をTOKYO解放区が果たせたら幸いです。
【ITS創設者のバーバラ・フランキンからのメッセージ】
ようこそ、ITS日本人ファイナリスト展へ
ITSは設立以来15年間、世界中のたくさんの才能ある若者たちに接してきました。
そして当初より、その意義を心から大切にしてきました。
彼らは純粋な創造力の”種”であり、私たちはコンテストを通じてその”種”を育んでいるからです。
たとえ彼らが映画や音楽、演劇の世界で活躍していたとしても、また、名だたるファッションブランドで活躍したり、自分のブランドを設立していたとしても
その才能の種が花咲き、力強く育つのを、私たちは心からの敬意と感謝、歓びの気持ちを込めて見つめています。
彼らの過去、現在、未来そのすべてがITSなのです。
ITS設立者・ディレクター バーバラ・フランキン
ITS設立者・ディレクター バーバラ・フランキン
※1:ここのがっこう:http://www.coconogacco.com/
※2:佐藤友浩:2013年ITS審査員特別賞、MODATECA賞受賞
※3:中里周子:2014年ITSジュエリー部門、アートワーク部門受賞
■世界で活躍する若手の登竜門ITSに注目した理由
私がITSに行くきっかけとして、リトゥンアフターワーズ(writtenafterwards)のデザイナー山縣さんが主宰する「ここのがっこう」※1の存在があります。以前から、生徒さんの作品の講評をさせていただいていて、RYOTAMURAKAMIの村上亮太さんやマラミュート(malamute)の小高真理さんが在学していたことからも「ここのがっこう」のレベルの高さには注目していました。その「ここのがっこう」が力を入れているのがITSへの応募で、卒業生の佐藤友浩※2さんや中里周子※3さんが入賞したITSとは一体どんなコンテストなんだろうって。ITSについて色々調べるうちに、ITSの世界観にも魅かれて、ぜひ現場に行ってみたいと思ったんです。
■現地で迎えられたITSの“ファミリー感”
ITSに行く前から、このコンテストはデザイナーの創造性や個性、“クリエーション”の部分をすごく尊重している印象を持っていました。それで、実際に現地に行ってみて、コンテスト全体の“ファミリー的な雰囲気”にまず感動しましたね。
ITSの参加者たちで記念撮影
とにかく運営側がプロフェッショナルで、出演者(応募者)がコンテストでのびのびとプレゼンできるよう、きめ細やかなサポートが行き届いているんです。例えば、ITSはファッション、アクセサリー、ジュエリー、アートワークの4部門から、応募者がどの部門で応募するか自分で選ぶのですが、運営側が「あなたは別の部門も応募してみたら」と提案するケースがあるんです。本人も気がつかない才能の芽を見極めて掘り起こそうとする“勘の確かさ”と、応募者一人ひとりと丁寧に向き合う運営側の姿勢から“あったかさ”が垣間見えました。他にも、出演者同士でコミュニケーションが取りやすいよう、会期中はみんなでランチビュッフェを囲むなどの配慮がなされていて、会場内はピリピリした印象はなく、みんなとても打ち解けたムードでしたね。
それから、ゲスト(ファッションジャーナリストやブランドのデザイナー、スポンサー企業など)に対しても運営側の工夫は徹底されていて、ゲスト向けのITS観覧ツアーが完備され、すべてサイトから予約ができる点もすごいと思いました。専用アプリをダウンロードすると宿泊先や食事の案内、展示スケジュールまでが一目で確認できるなど、とてもスマートで分かりやすい工夫が凝らされているのです。また、ITSの事務局には歴代の受賞作品が保管されているので私もアーカイブツアーに参加し、ITSのコンセプトや歴史について理解を深めることができました。
歴代ITS受賞作品が見られるアーカイブツアーに参加
■世界中から集まった才能と出会えたITSでの3日間
世界中から集まった40人ほどのファイナリストたちの作品は、どれも本当に素晴らしかったです。粒ぞろいで個々のレベルが高く、作り、素材感、センスなど様々な要素をバランスよく備えていて、いわゆる新人っぽい粗削り感はありませんでしたね。これは、バーバラ・フランキン(Barbara Franchin)さんをはじめとする主催者側の審美眼の確かさと、采配の妙があってこそだと思います。
またITSでは、応募者自らが英語で作品のプレゼンを行い、個人ブースが設けられているのでゲストの質問に直接答え、スポンサー企業に売り込みをする機会が持てます。日本人の場合、語学の壁はあるかもしれませんが、作家として世界を舞台に活躍する上で、自己アピールの方法を学ぶにはとても貴重な経験だと思いました。実際にここで有名メゾンとコネクションを作り、契約をする人もたくさんいるようです。
ITSのファイナリストと、バイヤーやジャーナリストが直接話せる場もある
■伊勢丹新宿店TOKYO解放区で伝えたいITSファイナリストたちの魅力
ファッションが持つ“豊かさ”、“楽しさ”のようなもの。たとえば、ワクワク感であったり、みずみずしい想像力を包み隠さず形にしたものが“ファッション”なんだ!という感覚が伝えられればいいですね。ITSには、そういった豊かさがあるのが魅力だと思います。
ファッションって、機能的で実用的な面を追求することが必要不可欠でとても大事なこともありますが、それだけではないと思っています。ITSのデザイナーさんたちと作品が発する、純粋にファッションを愛し、楽しむエネルギーは、TOKYO解放区のコンセプトととても共通し親和性があると感じているので、それをそのまま受け取っていただけたら嬉しいです。商業ベースだけに捕らわれず、のびのびと好きなものを自由に創る感性に触れる“場”として、そして、ファッションが与えてくれるHAPPYやFUN、PEACEFULなマインドや感性に触れたり知ることのできる場・機会に相応しい役割をTOKYO解放区が果たせたら幸いです。
【ITS創設者のバーバラ・フランキンからのメッセージ】
ようこそ、ITS日本人ファイナリスト展へ
ITSは設立以来15年間、世界中のたくさんの才能ある若者たちに接してきました。
そして当初より、その意義を心から大切にしてきました。
彼らは純粋な創造力の”種”であり、私たちはコンテストを通じてその”種”を育んでいるからです。
たとえ彼らが映画や音楽、演劇の世界で活躍していたとしても、また、名だたるファッションブランドで活躍したり、自分のブランドを設立していたとしても
その才能の種が花咲き、力強く育つのを、私たちは心からの敬意と感謝、歓びの気持ちを込めて見つめています。
彼らの過去、現在、未来そのすべてがITSなのです。
ITS設立者・ディレクター バーバラ・フランキン
ITS設立者・ディレクター バーバラ・フランキン
※1:ここのがっこう:http://www.coconogacco.com/
※2:佐藤友浩:2013年ITS審査員特別賞、MODATECA賞受賞
※3:中里周子:2014年ITSジュエリー部門、アートワーク部門受賞