前日の夏日和から一転、早朝から雷雨に見舞われる中、17SSウィメンズミラノファッションウィークが幕を開けた。
イタリアのみならず、現代のファッションの中心的存在であるアレッサンドロ・ミケーロによるグッチ(GUCCI)は、顧客や業界人の高まる期待を裏切ることなく、新コレクションでもマキシマムな装飾主義をアップデートさせて魅せた。
同コレクションは“Magic Lanters(魔法のランプ)”をテーマに、豪華で贅沢なハリウッドのパーティーさながらの雰囲気だ。会場内はピンクのソファ、ピンクの絨毯にブランドを象徴するグリーンとレッドのラインが引かれ、壁全面に貼り付けられた25万個以上のミラースパンコールが会場全体をピンクに染める。
どこからともなくスモークが充満し始め、英国人ミュージシャン、フローレンス・ウェルチの「release the tension(緊張を解いて)」という言葉とともにショーがスタート。BGMはオーケストラLa Traverseeの音楽と共に英国の詩人ウィリアム・ブレイクの詩をフローレンスが読み上げ、和やかで寝かしつけるような優しい声が響き渡った。
シフォン素材のティアードのイブニングドレスやシノワズリ調のパジャマ風ドレス、総スパンコールのドレスを着たモデルが、ピンクの霧の中を闊歩する。上質で贅沢な生地にはビビッドなイエロー、ロイヤルブルー、グラスグリーンといったメルヘンな色使いを用いた。日本の着物やチャイナドレス、民族服などオリエンタルなアイディアが取り入れ、国境・時代を自由に横断する、ミケーレの折衷主義が随所に感じられる。英国エリザベス女王が好みそうな花のフォルムをしたヘッドギアやヘッドスカーフ、変形型レンズのグラスはクリスタルが施され、アクセサリーが重層的な装飾を一層引き上げ、エモーショナルなまでの服飾美を追求した。
コレクションを通して想起されたのは、英国の20世紀初頭の王エドワード7世が君臨した時代のファッション。コルセットから解放されハイウエストのドレスがトレンドを台頭し、他国の服飾文化に影響を受けた頃。物質的豊かさを謳歌し、自己満足や裕福さを反映させたこの時代と、70年代のバブル真っ只中のハリウッドのナイトクラブ、そしてティム・バートンが描くようなおとぎ話の世界観を組み合わせ、類を見ないミステリアスで空想的なGUCCIワールドを見事に創り上げた。
現実世界に期待し未来に夢を描くことが困難になりつつある今、艶美さをうたうグッチはモードという方法で私たちに甘い夢を与えてくれる存在になりつつある。