【対談】キギ・植原亮輔×写真家・新津保建秀--プロのクリエーターが考える「写真を撮ること」

2016.09.10
ギギ(KIGI) の植原亮輔さん・渡邉良重さん、スロー・ア・キッス(THROW A KISS)ブランドデザイナーの青木むすびさんとFASHION HEADLINEが始めた「HOHO Smile EVENTS」。10月2日に開催される第3回のHOHOでは「iPhoneで撮る写真ワークショップ」を開催します。そこで、ホストであるクリエイティブディレクター・植原亮輔さんと写真家・新津保建秀さんに、イベントのことから写真のこと、クリエイションのことまで語ってもらいました。

■写真を撮るということは“観察する”ということ

ーー次回のHOHOのテーマは「iPhoneで撮る写真」です。このテーマを選んだのはどうしてでしょう。

植原亮輔(以下、植原):スマホで写真を撮るというのはいまや誰でもする行為ですけど、意外と上手く撮れない。単純に構図の問題とか、加工の仕方とか、ちょっとした知識だと思うんですけど、そのあたりを共有できたらなと思います。実は、HOHOプロジェクトを一緒にやっている(青木)むすびさんに「知りたい!」って言われたのもあるんですけどね(笑)。

ーー確かに今は誰でもスマホで簡単に写真を加工できたりしてある程度の質の写真が撮れますが、プロのクリエーターとの一線って必ずあると思います。

植原:例えば、インスタグラムってボタン一つでいい感じになるじゃない。でも、僕はあの感じってあまり好きじゃないんですよ。何故かな、と考えると、みんな一緒で均一的になってしまうところなのではないかと。意志をもって変換されたものじゃないから。

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キギの植原亮輔さん


新津保建秀(以下、新津保):SNS上の植原さんの写真を見ていると、それぞれのよさもさることながら、日常で積み重ねた考えの痕跡を辿ることができて、漠然と「いい感じと思う今」だけを撮っているのとは違う気がしますね。継続して考えていることの集積によるイメージが独特のアーカイブを形成しているというか。自分なりに植原さんの作品から読み取ったアイデアと、アップされている写真を対比させて見ると、とても興味深いです。

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写真家・新津保建秀さん


植原:確かに、新津保さんのインスタグラムとかフェイスブックを見ていても、たまに絶対に素人じゃ分からないだろうなという写真がある。これまでの新津保さんの作品とつなげて見るから面白いんだろうね。

ーーインスタグラムやフェイスブックといったSNSの位置付けは?

新津保:仕事では常に不特定多数の方にむけた撮影が多いので、いまのところSNSでは特定の友人を想像して撮影しています。以前、ドミニク(・チェン)さんたちが開発した、撮影するだけで写真と動画を共有するアプリ「Picsee」が開発段階にあったとき、テストユーザーのひとりとして、彼と共通の友人とともに3人でグループを作って年単位の長期間にわたる実験をしました。このとき経験した画像のみを介したコミュニケーションを経てから、画像によって伝達されるイメージ全般への見方が大きく変わって、フェイスブック上の友人たちによる写真を注視するようになった。すると、植原さんの写真はうまい按配にセレクトされているなと思って。

植原:新津保さんにカメラを教わったからですよ。実は、デジタルカメラを使ってマニュアルで撮っていることも多いんです。スマホだとめちゃめちゃ広角じゃないですか。なんでこんなにテンションが高いんだろうって(笑)。モノを見るときって、スッとそのものだけを見ていることも多いはず。マニュアルだとピントを合わせるところが明確だから、どう撮りたいという意志が表現できるんです。スマホで撮ると全部にピントが合うからつまらない、って言いながらスマホで撮るワークショップをやるわけですけど(笑)。

新津保:これは一緒にフラワーベースの撮影をしたときなのだけど、植原さんがクリエイティブをディレクションするときや、写真を撮るときのアプローチでは、10代から20代に取り組んだデッサンのなかで獲得した、対象を丁寧に観察する姿勢がとても大きいのでは、と思いました。デッサンでも写真でも対象をよく観察して何かに置き換え、また観察してゆく過程を繰り返すなかで、自分はいま何を見ているのかということに自覚的になって、それまで気がつかなかったものを発見する瞬間がありますよね。

植原:あと、そのときの偶然性とか、変わっていくものをどう捉えるか。

新津保:今、そこで起きていることにどれだけ心が開いているかは大きいですよね。

植原:そんな話とともに、今回のワークショップで僕は、写真加工アプリを使った僕なりの表現の方法をお伝えしながら、写真についての考え方をお話しできたらと思っています。

新津保:僕は写真で色彩を扱う際の基的なところをお伝えできればと思います。
写真加工アプリは割と細かなパラメーターが豊富に揃っているのですが、それらに振り回されることなくなるべくシンプルに使っていければ。

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ワークショップでは、iPhoneで撮影した写真の加工を行う


■二人を繋ぐ?ドットの世界

―― 新津保さんは以前ドミニク・チェンさんとの対談で、20代のころ、初期ゲームボーイのドット絵を用いて絵画制作をするフランスアーティストとの出会いがイメージとメディアの関係を考えるようになった契機だとおっしゃっていて、植原さんもシールで描いたドットの作品(「implosion←→explosion」)を発表されています。もしかしたら二人をつなぐキーワードはドットなのかな、と勝手に想像していました。

新津保:確かに、そんな話もしたかも(笑)。この友人はインターネットのかなり初期の頃から、これを自覚的に使った制作方法を実践していたのですが、その様子を見て、これからイメージの共有の在り方が大きく変わるのだろうなー、と考えるようになったんです。

植原:僕の作品「implosion←→explosion」には、写真をミクロの世界まで見ると1つの点になる、そこに立ち返りたいという思いがあります。原子の周りを電子が回るミクロと、太陽の周りを惑星が回るマクロの構造は一緒だから、ミクロとマクロは一緒だという。じゃ、人間も絶対に同じ構造なんだと思えて、そうすると、ミクロとマクロはこんなに整然としているのに、なんで僕はこんなに欲望にかき回されて生きているんだろうって。僕の人生のテーマは「集合と拡散」なので。

ーーでは、植原さんが太陽だとしたら、周りを回っているものは何なんでしょう?

植原:それは、僕が愛情をあげる人たち。太陽って愛情だと思うんです。磁場にエネルギーがギュッと溜まってプンと噴出す炎があるじゃない。それが周りの惑星に愛情を与えているんだと思っていて、人間も同じようにギュッと詰まったエネルギーがないと人に愛情を与えられない。だから自分を成長させるとか、自分自身が幸せになろうという気持ちを持つことが大切だと思います。でも100%じゃなくていいの。80%とかで(笑)。

新津保:いい話になってきた(笑)。なぜ植原さんの作品がこんなに人気があるのか、その理由の一端を垣間みた感じです。なるほど、愛情かぁ。

ーー写真の話からクリエイションの真髄までお聞きできた気がします。ワークショップでも意外な話が飛び出しそうですね。楽しみにしています!ありがとうございました。


【Profile】
植原 亮輔(うえはら りょうすけ)
アートディレクター。北海道生まれ。DRAFTを経て、2012年渡邉良重と共にKIGI.Co.Ltdを設立。グラフィックプロダクト、ブランドデザイン、映像等を手掛ける。2014年滋賀の職人たちと共にプロダクトブランドKIKOFを立ち上げるほか、2015年にオリジナルショップ&ギャラリーOUR FAVOURITE SHOP東京白金)をオープン、また作品を制作し美術館等で発表するなど、クリエイションの新しいあり方を探し活動を続ける。作品集『KIGI_M』をリトルモアより出版。ちなみに、お気に入りのカメラは新津保さんから教わったα7R(ソニー)+ライカのレンズ。
http://ki-gi.com/


新津保 建秀(しんつぼ けんしゅう)
1968年、東京生まれ。写真家。
写真、フィールドレコーディング、ドローイングなどによる制作とともに、
企業、音楽家、研究者、ファッションブランド、デザイナーらと共同作業を数多く手がける。主な作品集に『\風景』(角川書店)『Rugged TimeScape』(池上高志との共作、FOIL)、関連書籍に『複雑なトポグラフィー庭園』(東京藝術大学)、『MTMDF』(HAKUHODO DESIGN)、『建築と写真の現在』(TNプローブ)など。日頃は愛娘をスマホでも撮影しているよきパパ。
http://www.kenshu-shintsubo.com/


【イベント情報】
※定員に達したため、受付は終了いたしました※
2016年10月2日(日)受付13:45、イベント14:00~16:00
#003「iPhoneで撮る写真のワークショップ」
HOST:植原亮輔、新津保建秀
場所:H.P.DECO
〒150-0001東京都渋谷神宮前5-2-11
定員:10名
※多数のご応募があった場合は抽選とさせて頂きます。ご了承ください。
参加費:3,500円
参加条件:「Snapseed(バージョン2.9)」がダウンロードされたiOS8.0以上のiPhoneをお持ちの方
「Snapseed(バージョン2.9)」のApp Storeのリンクはこちら
https://itunes.apple.com/jp/app/snapseed/id439438619?mt=8

お申し込み募集開始日:9月11日(日)
お申し込み方法:hpdeco_contact@hpgrp.com(北濱)まで、メールをお送りください。
件名に「10月2日 HOHO#003予約」と記載し、
本文に 1)お名前、2)お電話番号 をご記入の上お申し込みください。
後日、予約確認のメールをお送りいたします。
和田安代
  • HOHO Smile EVENTS #003は、写真家の新津保建秀さんとキギの植原亮介さんがホスト
  • HOHO Smile EVENTS #003は、写真家の新津保建秀さんとキギの植原亮介さんがホスト
  • 植原さんがカメラを買う時は、新津保さんに相談したという間柄
  • キギの植原亮輔さん
  • 写真家の新津保建秀さん
  • 【対談】キギ・植原亮輔×写真家・新津保建秀--プロのクリエーターが考える「写真を撮ること」
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  • HOHO Smile EVENTS #003の会場となる表参道の「H.P DECO」
  • 対談の間にも、実際にiPhoneで撮った画像を加工してみるシーンも
  • 対談の間にも、実際にiPhoneで撮った画像を加工してみるシーンも
  • 【対談】キギ・植原亮輔×写真家・新津保建秀--プロのクリエーターが考える「写真を撮ること」
  • HOHO Smile EVENTS #003の会場となる表参道の「H.P DECO」
  • HOHO Smile EVENTS #003の会場となる表参道の「H.P DECO」
  • HOHO Smile EVENTS #003の会場となる表参道の「H.P DECO」
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