6月13日から18日までイタリア・フィレンツェで開催される第92回ピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTI IMMAGENE UOMO)のメインプログラムの概要が発表された。
注目されるのは、14日に行われるスペシャルゲストデザイナーとして2018年春夏コレクションを発表するJ.W.アンダーソン(Jonathan William Anderson)。2008年にアクセサリーのファーストコレクションを発表し、2010年にウィメンズのカプセルコレクションでロンドンコレクションのデビューを果たした若干32歳の北アイルランド出身のデザイナーが、このわずかの期間に巻き起こした“ジェンダーレス”と“ユースカルチャー”旋風は、モードビジネス自体を大きく変革させた。イタリアンクラシコの聖地と呼ばれたピッティで、彼のコレクションがどう受け止められれるのかは大きな話題だが、2013年にLVMHグループが出資し、スペインの老舗レザーブランド・ロエベ(LOEWE)をリブランディングさせた、彼のアーティスティックな才能は高く評価されている。
ピッティ・ウオモのコミュニケーション&イベントディレクター、ラポ・チャンキは、「何にも増して我々が魅了されたのは、物づくりのクオリティの高さがその価値を不動のものにしているコレクション、それを通して表現される彼のクリエイティブ性と折衷主義、そして議論の余地もないサルトリアルスキルに裏打ちされたメンズウェアの素晴らしさ。また、常に知的なコミュニケーション方法を操るアンダーソンのショーには、毎回驚かされている」とコメントしている。
もう一人のスペシャルゲストはオフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)のヴァージル・アブロー。2018年春夏メンズコレクションとウィメンズのプレコレクションの一部を15日に発表する。2013年ブランドをデビューさせてからのモードシーンへの急速な名前の浸透力は、JWアンダーソンと並ぶ時代の寵児。1980年に米国でガーナ移民の子として生まれ、イリノイ工科大学で建築の修士号を持ち、カニエ・ウエストのクリエイティブチーム「Donda」のクリエイティブ・ディレクター、DJなど、マルチプル・デザイナーとしての才能を開花させた。日本のストリートブランドのマーケティングから建築、音楽、スポーツ、ルネッサンスまですべてを取り込んでブランドを構築してきた彼が、古都フィレンツェで何を発表するかも興味深い。
「ピッティ・ウオモでコレクションを発表できることはとてもエキサイティングでわくわくしている」と5月に来日したヴァージル本人は話しており、「ピッティ・ウオモの提供するこのプラットフォームは、ここ数年にわたり、ファション史を刻む最も重要なアリーナとなっていると認識している。そんな歴史に唯一無二なチャプターを刻むことが、私の今の目標」とコメントを寄せている。
さらにスペシャルイベントとして発表されたのがホワイトマウンテニアリング(White Mountaineering)のデザイナー、相澤陽介がクリエイティブ・ディレクションに参画したハンティング ワールド(HUNTING WORLD)のブランド創設50年目にして初めてのランウェイショー。同ブランドのアイコニック素材、バチュークロスをシンボリックに用い、新しいアウトドアブランドとして2018年春夏コレクションを14日に発表する。相澤にとってピッティ・ウオモは、2013年に新人デザイナーとして初めて招待されランウェイを発表。以降、バブアー(Barbour)とのコラボレーション発表、2016年1月には「adidas Originals by White Mountaineering」のゲストなど公式イベントの常連デザイナーとして高い評価を得ている。
前回より新たに設けられたJFW(Japan Fashion Week Organization)と、ピッティ・イマージネの間に交わされた2年間のパートナーシップの第2回目となるコラボレーションプロジェクトでは、ヨシオクボ(yoshiokubo)が2018年春夏コレクションを発表。ヨシオクボは今年1月ミラノでジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)が支援する新人デザイナープロジェクトでコレクションを発表しており、2シーズン続けてのイタリアでのランウェイ開催となる。
他にも今回のゲストネーションとしてオーストラリアからCHRIS RAN LIN、 COMMAS、DOUBLE RAINBOUU、EX INFINITAS、SENER BESIM、STRATEAS.CARLUCCI、TEN PIECESの7組の新人デザイナーが、ウールマークカンパニーの支援を得てメリノウールにフォーカスしたコレクションを発表。「Guest Nation Australia」のブースでは、オーストラリア人フォトグラファー、バルトロメオ・セレスティーノ(Bartolomeo Celestino)による作品も展示される。
それ以外にも、スペシャルイベントとしてヒューゴボス(HUGO BOSS)がHUGOの2018年春夏コレクションも予定。クリスチャン ルブタン(Christian Louboutin)とピッティの新しいプロジェクト、ポール・スミス(PAUL SMITH)もスペシャル・プレゼンテーションを予定している。
さらに今回のピッティ開催期間を含め10月22日までウフィツィ美術館、ガリエラ美術館・モード&コスチューム博物館との協業によりプロデュースする「Il Museo Effimero della Moda(The Ephemeral Museum of Fashion 儚いファッションの美術館)」がオリヴィエ・サイヤール監修の元、ピッティ宮殿で開催される。
Text: Tatsuya Noda