ディオール(Dior)の2018クルーズ コレクションが5月11日(現地時間)、アメリカ・ロサンゼルスで発表された。
アーティスティック ディレクターのマリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)が自身初となるクルーズコレクションの舞台に選んだのは、ロサンゼルス郊外にある広大な「アッパー・ラス・バージーンズ・キャニオン・オープン・スペース保護区」。巨大な熱気球とテントが並んだランウェイは、アメリカの開拓時代を想起させる雄大さを醸し出していた。
マリア・グラツィアのメゾンのヘリテージを辿る旅は、1951年にクリスチャン・ディオール(Christian Dior)が発表した“オーバル”ラインのインスピレーション源となった「ラスコーの壁画」まで遡ったようだ。コレクションでは、先史時代の小像・ヴィレンドルフのヴィーナスのように大地と結びついた古来の素朴な女性のイメージや、フランスの哲学者ジョルジュ・バタイユ(Georges Bataille)が「人類の夜明け」と称したラスコーの洞窟から現れた馬や牛、狼などの動物たちを最高級のシルクジャカードに乗せ、野生的なエスプリを湛えた女性像を表現した。
シルエットはメゾンを象徴する女性らしいプロポーションや優美さはそのままに、コンテンポラリーな背景にマッチするようにアレンジされた。スカートやニットケープの裾にはボリュームのあるフリンジ、シースルーのスカートはヘビ皮やフェザーのパターンによってサファリテイストに。スポーツのエッセンスはオートクチュールと交わり、抽象的な装飾となって蘇った。そして、もはや彼女の代名詞と言えるチュールのイブニングドレスは、アースカラーのニュアンスを帯びた美しい刺繍で彩られ、新たな息吹をもたらしていた。すべてのルックにスタイリングされたストローハットは、帽子デザイナーのスティーブン・ ジョーンズ(Stephen Jones)によるもの。洞窟壁画のモチーフにターコイズやビーズを配したデザインが、コレクションのムードを盛り上げる一助となっていた。
さらに、今季もタロットモチーフや新解釈から生まれるバー ジャケットは健在。カレン・ヴォージェルとヴィッキ・ノーブルが1970年代に共同制作したタロット『Motherpeace』の死神カードのモチーフは繊細な刺繍によりブラックのロングドレスへ描かれている。ブラックデニムで仕上げたバー ジャケットも、マリア・グラツィアのスピリットとメゾンへの敬意を体現する象徴的なアイテムとして、全84ルックにもおよぶコレクションの中で異彩を放っていた。