三原康裕1/2--伝統とは、美しいモノを作る精神【INTERVIEW】

2014.04.01

三越伊勢丹ホールディングスは、「日を元気にしていく」という志のもと、産地と消費者をつなげる「JAPAN SENSESキャンペーンを2011年にスタートした。

4年目を迎える同キャンペーンが、伊勢丹新宿店で4月1日から15日まで開催される。中でも注目したいのは、日本古来の染色技法である藍染めを使ったプロジェクト「あおもり藍」だ。「N.ハリウッド(N.HOLLYWOOD)」「ファクトタムFACTOTUM)」「ホワイトマウンテニアリングWhite Mountaineering)」を始め、メンズ16ブランド青森産の藍を使った商品を作り、その魅力を消費者に届ける。参加ブランドの一つである「ミハラヤスヒロ(MIHARAYASUHIRO)」のデザイナー三原康裕に話を聞いた。

――プロジェクトを聞いた時の率直な感想は?

実は14SSコレクションで、藍から作られる天然染料SUKUMOを使ったコレクションを発表したばかりだったので、個人的にも興味のあるプロジェクトでした。僕にとって、藍の可能性はまだまだ未知数。ひとことで言えば、青色に染まるということなんですが、濃淡の出し方一つをとっても奥深い。ましてや生地とレザーの染まり方は全く異なります。僕はからデザイナーとしてのキャリアをスタートしたので、今回は靴に焦点を当てました。革靴を藍で染めるのは、かなり実験的な試みだったと思います。

――あえて難しいアイテムに挑戦したのですね。

伝統工芸とデザイナーがタッグを組み、目新しい見せ方をしたり、一時的に注目を集めたりするだけでは、プロジェクト本来の意味が損なわれてしまう。デザイナーがかかわることで、新しい技術が開発されたり、産地の人々の心に響く何かを生み出すことが重要だと考えています。そうでなければ、伝統は衰退し、過去から未来に継承されることはないでしょう。ですから、革を藍で染めるという、これまでに挑戦したことがない取り組みに挑みました。

――製作過程で苦労した点は?

14SSコレクションでは、あらかじめ染色した素材を使って製品を作ったので、ある程度、完成形が想像できました。一方、今回は靴の状態で染料に浸けていきました。アッパーとソールに使用した革も異なるので、どんな風に染まるのか、いい意味で成り行き任せのライブ感がありましたね。染めた後、革の油が抜けてバリバリになった時は、失敗したかと思いましたが……。木型を入れて丁寧にクリームを塗るうちに、革の風合いを取り戻し、製品化することができました。

――仕上がりはいかがですか?

作り手の温もりが感じられる靴になったと思います。底付けも手縫いで、ソールもハンマーで叩いて仕上げています。プレーンな靴ですが、どこか愛嬌を感じてもらえるのではないでしょうか。色は透明感のある青を目指しました。理由は二つあって、一つは革の経年変化を楽しんでもらいたいから。もう一つはデニムが好きな方が多いので、靴と同化しないよう、2回染めで少し浅い色にしました。もちろん仕上がりには満足していますが、藍の更なる可能性を再認識することができました。

2/2に続く。
石間京子
  • 靴から自身のブランドをスタートした三原氏は、あいもり藍の靴作りに挑戦
  • 新しい技術が生まれたり、産地の人の心に響く取り組みをしたいとコメント
  • 靴になった状態で染めるのは、非常にライブ感のある体験だったと語る
  • どこか柔らかな表情を持つシルエットの靴が仕上がった
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