9月21日から来年1月19日まで、ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館(Victoria and Albert Museum)にて、真珠をテーマとした企画展「パール(Pearls)」が開催されている。古代ローマから現代に至る200点以上に及ぶジュエリーや関連作品が華やかに並び、歴史的・科学的なアプローチで真珠の魅力に迫る。
会場入り口に掛かる、パールジュエリーを身に付けて微笑む17世紀パリ淑女の肖像画「Portrait of Jeanne de Marigny」(V&A所蔵)が来場者を迎える。18日に行われた内覧会では、この肖像画の下、キュレーションを務めたジュエリー歴史家のBeatriz Chadour-Sampson氏が、真珠がこれまで人類の歴史の中で、権威や富の象徴として、ファッションとして重要な役割を担ってきたこと、そして自然から享受する美であるというその神秘性について言及した。
「エメラルドやダイヤモンドなど他の宝石の人気は、ファッションの変遷次第で変化してきた。しかし真珠ほど東西グローバルに、これほど長きに渡って絶え間なく装い、求められている宝石はない」と同氏。
会場では、写真家Boo Beaumountによる真珠のX線写真シリーズや、自然界における真珠の成り立ちを紹介するビデオ、カタール湾岸における1970年代の真珠採取業やトレードの様子を収めた記録映像が展示されており、科学的なアプローチで真珠を探求する。
また、東西それぞれにおける真珠の役割が、古代ローマ時代から年代順に解説される。イングランド王のチャールズ1世やスコットランド女王のメアリー、女優エリザベス・テイラーなど王侯貴族、セレブリティが身に付けた歴史的なジュエリーがきらびやかに並ぶ。
続いて真珠産業における大きな転換点として、今年、養殖真珠発明120周年を迎える「ミキモト」の養殖真珠にスポットを当てる。ミキモト創業者である御木本幸吉の養殖真珠発明のストーリー映像、アコヤ真珠を使ったミキモトジュエリーの歴史的名品、生産過程の記録写真などの展示品が一室を占める。
披露されたジュエリーは、1937年のパリ万博に出展され、その製作技術の高さから「幻の帯留」と言われるようになった多機能ジュエリーの帯留「矢車」や、マリリンモンローが2番目の夫であるジョー・ディマジオより日本へのハネムーンの際に贈られたネックレス、5,000個のアコヤ真珠を使用したスカーフ「Journey of 5000 Pearls」や、ネックレスやチョーカーなどのモダンなハイジュエリーなど。
会場のラストでは中国における淡水真珠の大量養殖について触れられ、溢れるばかりの真珠が入ったバケツが並ぶ展示で終わる。今後の産業や環境へのメッセージを示唆しているようだった。
【イベント情報】
「Pearls」
場所:Victoria and Albert Museum
住所:Cromwell Road, London
会期:2014年1月19日まで
時間:10:00から17:45(金曜日は22:00まで)
休館日:12月24から26日
入場料:10ポンド