【日本モード誌クロニクル:横井由利】新コンセプトで再創刊した『マリ・クレール スタイル』とは--12/12前編

2014.01.05

書店から『マリ・クレール』が姿を消すなど、誰も想像しなかった。ところが、2009年惜しまれながら27年の歴史を閉じた。

いったん休刊した雑誌の復刊には、確固としたモチベーションと成功の確信が必要だ。1982年中央公論社(現中央公論新社)より創刊した時、雑誌のライセンスとそのタイトルを冠したプロダクツのライセンス事業がセットになり展開されていた。雑誌の休刊後も年間200億円超といわれるブランドビジネスだけが継続され、マリ・クレール ブランドのグッズは販売されていた。

国のマリ・クレール アルバム社は、日本からスタートし、今では世界35ヶ国で展開する、女性誌としては世界最大の発行部数を誇るライセンスマガジンが日本で刊行されていない不自然さを解消する手立てはないかと、角川書店へ移る前の中央公論社最後の編集長、田居克人に連絡を取った。

「最初にフランスからコンタクトがあった時は、モード誌の厳しさを知っているだけに、単に復刊すればいいとは思えませんでした。そこで編み出したのが、現在の形でした」(田居編集長)

現在の形とは、書店では販売せず、中央公論新社の母体である読売新聞に挟み込み、無料で配布するというスタイルだ。しかもあらゆるシミュレーションにより、48万部を刷り、富裕層が多く居住する東京の一部と地方都市の一部に配布し、ラグジュアリーブランドを中心とした広告を収入源とするというアイデアだった。

「このビジネスモデルを、マリ・クレール アルバム社に提案したとき、フランスの社長は躊躇し判断できず、創始者の現会長のモンモールさんに相談したところ、『日本で復刊させるにはこの方法しかない』との一言で決まったんですよ」と、田居編集長は語った。

こうして、2012年7月『マリ・クレール スタイル』と新たなネーミングで、3年ぶりに復刊した。

新聞へ挟み込むには、タブロイド判で52ページが最大。カバーインタビュー、商品を中心にしたコラムファッションページ、ビューティーページと、少ないページに充実感を満載させる。商品紹介は、webと連動して更にバリエーションを見せていくフォーマットだ。webについては、AFP社と契約しているMODE PRESSと連動し、1日10から15のトピックスをアップしている。

ただ、ラグジュアリーブランドの広告は、「紙媒体の方が圧倒的に有利」と田居編集長。この考えは、米『VOGUE』編集長アナ・ウィンターも同じとか。「今クライアントはブランドのエモーションを伝えるために、ブランドの背景にあるストーリーや、イメージ表現の妙を駆使して消費者に訴え掛けている。ところがwebは情報の発信力はあるものの、紙媒体以上のビジュアルの追求がされていないのが弱点。今後、動画によるイメージ表現がものをいう時代がやって来たときに、webの真価が問われるだろう」と、いささか冷ややかな見解だった。

今後の展開について訊ねると、『マリ・クレール スタイル』の存在は知っているが、読売新聞を定期購読していないので、手に入らないとの要望に応えて、今年、東京の銀座線にあるニューススタンドで200円の定価をつけて販売する。あくまでもトライアルで、このことが書店売りに繋がるとは考えていないとのコメント。配布部数も現在の50万部から60万部に増やす予定。年間16回発行しているものを20回(例えば、メンズ版を発行など)に増やし、ビジネスを拡張させていくかが目下の課題になっている。

編集者は、読者が必要とするテーマを探り、それがヒットすると永遠のマンネリと言われるほど、毎年同じテーマを手を替え品を替えして焼き直してきた。つまり、鉱脈を掘り当てるのが編集長の仕事だった。今、編集長に求められるのは、ビジネスを成功に導くアイデアをいかに編み出す能力をもっているか、という時代になってきたようだ。

前期完。後期は『ヴォーグ ジャパン』『ハーパーズ バザー』『ヌメロ・トウキョウ』を予定。
Yuri Yokoi
  • 『マリ・クレール スタイル』2012年2月復刊号(中央公論新社刊)
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