木曜日連載、アート・ブックショップ「NADiff(ナディッフ)」各店による今読むべき1冊。今週は、『池田学 The Pen』。東京・新宿の支店、ギャラリー5(新宿区西新宿3-20-2東京オペラシティタワー3階)によるご紹介です。
■『池田学 The Pen』
佐賀県立美術館で開催され、その後金沢21世紀美術館などに巡回する同名展覧会の図録であり、池田学の画業20年分の集大成といえる作品集。1mmに満たない細さのペン先から生まれる線の積み重ねによって濃密に紡がれた約100点もの作品が収録されている。特に注目すべきは作品の部分拡大が多数掲載されていること。実物を前にしても鑑賞しきれない細部の描写はもはや眼福の域と言える。
転換点となった東日本大震災以降、アーティストとしてできることを模索しながらアメリカにて3年を費やし描き上げた3m×4mに及ぶ過去最大の最新作「誕生」では、放射能や移民などの社会問題の他に、池田学の個人的経験にまつわる描写が織り交ぜられている。復興と自身の再生への祈りを込めて描いたこの作品に、多くの人がそれぞれの想いを重ねることができるだろう。作品の中に秘められた森羅万象の物語を、ぜひ目を凝らして見て頂きたい。
【書籍情報】
『池田学 The Pen』
出版社: 青幻舎
言語:日本語
ソフトカバー/168ページ/298×294mm
発刊:2017年2月
価格:3,700円