世界90ヶ国から1,200以上の応募が集まった若手ファッションデザイナーの登竜門、LVMH Prizeのファイナリスト6ブランドに、日本からアンブッシュ(R)(AMBUSH (R))とコザブロウ(KOZABURO)が選出された。
デザイナーのユン(YOON)とともにAMBUSH (R)のデザインを手掛けるm-floなどのMC/DJ・バーバル(VERBAL)は「えっ、本当に僕たちが!? まさかファイナルに残るなんて夢にも思っておらず、滅相もないという感じです」と本人も驚きのコメント。「展示会を見に来てくれた方から、応募すればと勧められて、軽い気持ちで書類を揃えて応募したら、ファイナルに。本当に僕たちが?」と信じられない様子だ。
2008年にジュエリーからスタートしほぼ独学でデザインを学び、洋服にコレクションを拡大していったAMBUSH (R)の二人と、もう一つの日本からのファイナリスト・赤坂コザブロウの経歴は対照的だ。赤坂は英・セントマーチン校と米・パーソンズ校で学んだ後、トム・ブラウンのメゾンでのキャリアを持つ。ストリートとメインストリームのモードと、そのプロフィールは違っているが、自らデザインの影響に90年代の東京のストリートファッションとサブカルチャーとしての音楽を標榜する赤坂と、クラブムーブメントをベースとしてブランドを成長させたAMBUSH (R)が今回選出されたことは、ラグジュアリーストリートという言葉まで生み出した近年のモードシーンを象徴している。VERBAL & YOONの2人は“Business of Fashion (BOF)” が発表する「ファッション界を変える世界の500人」に 2015年度2016年度の2年連続選ばれている。
前回、日本のブランドとして初めてファイナリストとなったファセッタズム(FACETASM)に続いた2ブランドだが、セミファイナリストには今年1月にピッティウオモでゲストデザイナーとしてショーを行ったサルバム(SULVAM)の藤田哲平も選出されている。ヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto)のパタンナーとして現場で地道にデザイナーのスキルを磨いた彼を含め、盛んに“ダイバーシティ(Diversity)”が喧伝される欧州で、その経歴の多様性も今後のラグジュアリーマーケットの重要なファクターとなる様相を呈している。
同コンテストは2013年に創設。審査員にはカール・ラガーフェル(Karl Lagerfeld)、ニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquiere)、フィービー・ファイロ(Pheobe Philo)、リカルド・ティッシ(Riccardo Tisci)、JWアンダーソン(JW Anderson)、マーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)などLVMH関連のデザイナーが名を連ねる。優勝者には30万ユーロとLVMHからの支援を受けられ、2015年にはオフホワイト(Off-White c/o Virgil Abloh)のヴァージル・アブロー、ヴェトモン(Vetements)のデムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)、グランプリを獲得したマルケス・アルメイダ(Marques’Almeida )らが、ファイナリストに名を連ね、既に現在のラグジュアリーシーンを新人とは呼べない勢いで牽引しているのは言うまでもない。
なお、グランプリはフォンダシオン・ルイ・ヴィトン(Fondation Louis Vuitton) で6月17日に開催される授賞式にて発表される。
Text: 野田達哉