山本寛斎が1月2日、伊勢丹新宿店に来店した。本館6階催物場で行われている「歌舞伎ファッションミュージアム」内で自身の作品の展示とトークイベント、同館2階TOKYO解放区での「KANSAI YAMAMOTO POP UP STORE @ TOKYO解放区」で接客を行うため。
「歌舞伎ファッションミュージアム」で“BLACK”〈現代〉と題したコーナーにおいて、「現代のKABUKI者 山本寛斎の世界展―婆娑羅―」が行われている。黒で統一された装飾の中に、歌舞伎からインスパイアされた1971年のロンドンコレクションでも注目を集めた「凧絵」をモチーフにしたマントのレプリカや、1990年代以降“スーパーショー”としてロシア、ベトナム、インドや日本国内で現在までに350万人の観客を動員した寛斎がプロデュースしたショーで使われたきらびやかな衣装などを展示している。
このイベントの一環として、寛斎が2回トークショーを行った。1回目のトークショーのタイトルは「KABUKIとBASARA」。このトークショーでは、1971年にロンドンで行ったショーや、2011年にヴィクトリア・アンド・アルバート博物館で開催されたデヴィット・ボウイの回顧展に招聘された寛斎が行った42年振りとなるショーの映像の解説を寛斎自らマイクを持ち、来場者に解説した。ボウイはステージ衣装として寛斎のコレクションを着用している。
トークショーの冒頭で寛斎氏は「40数年前、自分で作った服を自ら着る自作自演をしていました。毎日、ドアを開けた瞬間からがファッションショーという心持ちだった」と語り、その当時日本国内で個性的な自身のファッションを見る周囲の目は冷ややかだったと振り返った。そして、伊勢丹のポップアップストアの店頭で顧客と会話をし、店内を回遊する人々の装いを見た感想として「日本人達の心の中に(個性的なファッションの)私を否定していた部分が変化して、個性的なファッションを容認する時代が来たのだと感じた。自分の個性も、他人の個性も容認する国になった」と語った。
2回目のトークショーでは、ファッションディレクター・ブロガーのミーシャ・ジャネットと寛斎が対談。寛斎氏は「ごますりではなく、彼女には確かな才能がある」とミーシャを評した。ミーシャは開催中のポップアップストアでも「凧絵」をモチーフにしたタイツやTシャツなどのアイテムでコラボレーションを行う他、同店で山本寛斎のコレクションアイテムにフォークなど斬新なアイテムをかんざしに見立てたヘアアレンジをコーディネートしたスタイリングを同店内にディスプレイされるボディで披露している。
トークショーの合間には寛斎自ら、ポップアップストアに現れ、来店者と写真を撮影したり握手をしたりと積極的に会話を楽しむ様子が見られた。アイテムは約20年振りに小売店で洋服を販売される。「この鮮やかな色彩のコレクションはパプアニューギニアの鳥の羽の美しさにインスピレーションを受けた。江戸時代から日本人は“侘び寂び”の精神なのか、地味で枠からはみ出ない装いをしているが、安土桃山時代まで遡れば“婆娑羅(ばさら)”と呼ばれるような強烈な色彩を好んでいた。日本人のDNAにはそれが刻まれているのでは」と語った。
トークショーは2回とも立ち見が出るほどの動員で、約1時間のトークショー中、山本寛斎氏に来場者からの熱い視線が注がれた。