「右脳と左脳でやっている感じ」――翌週パリで自身のブランド、ホワイトマウンテニアリング(White Mountaineering)のコレクション発表を控えているデザイナーの相澤陽介は、フィレンツェでの一仕事終え、バックステージで笑顔を見せた。
アディダス オリジナルス バイ ホワイトマウンテニアリング(adidas Originals by White Mountaineering)の16-17AWコレクションは、1月14日、フィレンツェで行われている第89回ピッティ・イマージネ・ウオモのゲストブランドのスペシャルイベントとして発表された。
古い駅舎を改装したレオポルダ駅の会場を入ると、山の頂上を目指すピークを思わす工事用ライトの列で来場者を案内し、会場奥にはスクエアなスペースを取り囲むように客席が設置されている。天井には3本の直管形ライトが3角形に組み合わされ、ステージ全体を巨大なトライアングルのライティングで形成。モデルがステージをウォーキングした後、定位置にとどまると、その直管形ライトが光りながら下降、上昇するというデジタルプログラミングと人間の動きを組み合わせたインスタレーションで会場を驚かせた。
コレクションは黒を基調にアディダスの3本ラインをグラフィカルにあしらったスポーツアイテムを、東京が牽引してきたストリートファッションをモードに消化したミクスチャースタイル。パッチポケットやポケットのフラップ、異素材の切り替えなどのディテール、ベーシックなアイテムのレイヤード、ボトムとトップスのバランスの提案が、“アスレジャー”という言葉と共に広がりつつある、新たな都会的なスポーツウェアマーケットに呼応している。
「今回はホワイトマウンテニアリングが得意とするジャカードなどのグラフィックパターンのモチーフはあえて封印した。アディダスの膨大なアーカイブとともに、スポーツウェアメーカーだからこそ開発できて、保有している機能性素材などを、普段の生活のなかに取り入れることで、ファッション本来の格好良さを追求した。メンズファッションは今、モード、クラフツマンシップ、ストリート、スポーツなどすべてをミックスしていくことが重要な時代。それを感じてもらいたかった」(相澤)
ショーのフィナーレは、天井の巨大な直管形ライトのトライアングルがピラミッド型の山を構成し、両者のコラボレーションを象徴的に表現。ショーの演出は、これまでホワイトマウンテニアリングの音楽などを手掛けてきた相澤の大学時代からの仲間を中心に、日本からのチームで構成された。
ピッティウオモでは13年にゲストデザイナーとしてショーを発表。バブアーとのコラボでも同展でプレゼンテーションされ、新しい世代を代表するメンズデザイナーとしてピッティで高い評価を得てきた相澤が、今回はそのトータルなコンセプトワークで、アーティストとして評価を高めたコレクションとなった。
Text: 野田達哉