ディオール(Dior)が、パリのロダン美術館にて2017年春夏オートクチュールコレクションを発表した。
アーティスティックディレクターのマリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)にとって、初のオートクチュールコレクションとなった今シーズン。彼女を魅了したのは、「迷宮」というアーキタイプが時代の流れと共に提起してきたさまざまな解釈だった。
それは会場のファンタジックな演出にもよく表れていた。巨大な木や花、植物が生い茂り、寓意的なイメージが随所に散りばめられている。歴史のあるメゾンの中で、伝統的なオートクチュールの世界に挑む自身の姿を、複雑に入り組んだ「迷宮」のイメージと重ね合わせているようでもある。「ディオールの世界を冒険することは、迷宮に足を踏み入れたようなもの」とマリア・グラツィアは言う。
ショーの序盤は、メゾンを象徴する“バー”ジャケットを再構築したブラックのルックが中心。トップはフーディーやケープへと形を変え、ゆったりとしたワイドキュロットと組み合わせた新しいタキシードスタイル。そこに、スティーブン・ジョーンズ(Stephen Jones)が手掛けたマスクやヘッドピースがスタイリングされ、ゴシック調の妖艶な雰囲気を醸し出している。ドレスには、印象的な花や蝶、星などのモチーフがあしらわれ、カラーパレットはピンク、グレー、モーブ、ブルーなど、淡いパウダリーカラーへと変化していく。“ニュールック”のようにウエストがシェイプされたグラマラスなドレスも登場。レースは解かれてオーガンジーの上に広がり、プリーツをあしらったチュールはフェミニンで優雅な広がりを見せる。そのどれもが、クチュールの粋を集結させた見事なシルエットを奏でていた。
メゾンのクチュリエが「女性に次いで、花々はもっとも崇高な創造物。たいへん繊細で、とても魅力的だが、丁寧に扱わなければならない」と語るように、何層にも重なったチュールに閉じ込められた美しい花々の装飾は、まるで大切に保管された植物標本を見るような圧巻のクオリティー。
フィナーレは、マリア・グラツィアが用意した盛大な舞踏会。世界中から多くのセレブリティが集まり、新生ディオールの輝かしい船出を祝っていた。