2/2より続く。
――コスメの店頭にはたくさんの色や商品があって、どれを選べばいいか迷ってしまいます。
メイクアップイベントやカウンターに行ったら、いつものイメージとは真逆のメイク、新しいカラーのアイシャドーやリップを試してみると、素晴らしい発見があるかもしれない。タトゥーや整形とは違い、メイクは気に入らなければ何度でもやり直せるから、どんどんチャレンジして、自分らしさを追求してみて。
――今年のナーズのホリデーコレクションも、色鮮やかなアイテムがそろいましたね。
美しい色達でしょう。マットなホットピンクのブラッシュ「4046」は、しっかり発色させることも、柔らかい印象を演出することもできる。限定フォーミュラのアイシャドーでは、特にメタリックブラックの「2088」と明るいオーキッドの「2087」が気に入っている。まつげのキワにのせて、黒などスモーキーなアイライナーを合わせると目元の印象が強って、日本人女性のダークな瞳の色も美しく際立たせるんだ。リップスティックは、トレンドでもあるオレンジレッドの「9601」、ホットピンクの「9602」などがおすすめ。いずれにしても自分が好きなカラーをつけるのが大事だよ。
―このホリデーコレクションは、ギイ・ブルダンがモチーフとなっていますね。クリエーティブディレクターのフランソワ・ナーズ(Francois Nars)と同様、あなたもブルダンにインスパイアされましたか?
フランソワにとってブルダンの影響は非常に大きくて、子供時代から仏『ヴォーグ』誌などの雑誌の切り抜きを壁に貼っていたそう。ブルダンが彼に影響を与えように、僕にとってはフランソワこそがインスパイアの源だった。彼は本当に偉大で、一緒に働けることを幸せに思っているよ。
――ファッション、カルチャー、アートに大変お詳しいですが、いつもアンテナを張っているのですか?
当然のことだね。特にファッションは、この業界では共通言語みたいなものだからね。フォトグラファーとも、映画について話したりする。そういったことを知らないと、クリエーター達とコミュニケーションもできない。ファッションやカルチャー業界で働くなら、その歴史を多く知っていればいるほどインスピレーションを得ることができる。僕は、幸運にも旅をする機会が多いから、異なる文化やスタイルに触れることも、すべてクリエーションの源になる。美にまつわる仕事に就くなら、美しい物事を愛していなくては務まらないから。
――最近は何にインスパイアされましたか?
僕が常に注目しているのは「時代」そのもの。時代感やトレンドを、雑誌やアートなどで人々がどう解釈して表現するのかに一番興味を引かれる。例えば70年代の映画『キャバレー(Cabaret)』(1972)は、20、30年代の再解釈をしているもので、そのミックス感覚が面白い。ソフィア・コッポラ監督の『マリーアントワネット(Marie-Antoinette)』(2006)は、時代考証に基づきながらも単なる焼き直しではなく、モダンなアプローチによって、ワクワクするものができるのだと教えてくれた。様々な時代を参考にすることは、メイクアップをデザインする時にも使える技だよ。