巷にかき氷旋風が巻き起こっている今日このごろ。消費者にとっては、斬新なトッピングのものから原料にこだわり抜いたラグジュアリーな逸品まで、各店の個性を満喫できる1杯を探すのも楽しみの一つだ。
しかし、そうした風潮をものともせず昔からの味わいを守り続けているのが新宿三丁目の「追分だんご本舗」(東京都新宿区新宿3-1-22)。青梅街道と甲州街道の分岐点「新宿追分」(現在の新宿三丁目交差点)で、昭和20年の創業時より、太田道灌ゆかりのだんごを提供している店だ。
こういう歴史ある老舗でいただくなら、やはりトラディショナルな和素材を思う存分堪能できる一品がいいだろう。
そう思い選んだのは、黒蜜きなこ小豆掛け(1048円)。
柔らかな氷全体を覆い尽くす香ばしいきなこの上には、ずっしりとした餡子の山!店ご自慢のだんごにも使われている餡子だけあって、見た目も味もなかなかのハイレベルだ。小豆の形を残した粒餡で、食べ応えもしっかりある。
しかもおもしろいことに、冷たい氷菓子でありながら、サービスで供されるあたたかい緑茶と相性抜群。互いの良さを引き出しあう冷菓とお茶は、さながら豊かなハーモニーを奏でるバイオリンとチェロのよう。
口に含むとさらりと溶ける氷が体内で美しい高音を響かすと、ホットなお茶が太く優しい音色で喉を温めてゆく。
うーん…これぞニッポンの美!
真夏の白昼夢に酔いしれたい人は、いざゆかん新宿追分へ!