コンセプチュアルアーティストのハンス・ハーケ(Hans Haacke)は1936年8月12日生まれ。ドイツ・ケルン出身。
シュトゥットガルト美術大学を卒業後、アメリカの国際交換プログラム「フルブライト・プログラム」によって渡米。フィラデルフィアのタイラー・スクール・オブ・アートで、更に勉強を重ねる。
大学を卒業すると、ハーケは自然や環境を題材とした作品を手掛けるようになる。60年代には土に植物の種を植えた「草は育つ」や、透明なプラスチック容器に空気を閉じ込めた「凝結」などを発表。67年にはニューヨークのクーパーユニオンで教授となった。
71年にハーケはグッゲンハイム美術館で開催を予定していた個展に、「シャポルスキー・マンハッタン不動産ホールディングス:1971年5月1日時点でのリアル・タイムの社会システム」を出品する。それは、マンハッタンにある不動産の写真と売買の記録から、同美術館の理事ハリー・シャポロフスキーの不動産売買に関する不正を明らかにしたものだった。しかし結局、個展は中止となり、彼を支持したキュレーターは美術館を解雇されてしまう。
その後、ハーケは反資本主義をテーマとする作品を数多く手掛けていく。78年にはオックスフォード現代美術館で開催された個展に、アパルトヘイトを支援する企業を非難した作品「A Breed Apart」を出展。88年にはロンドンで行われた展示会にかつての首相サッチャーの肖像画を飾り、そこに選挙キャンペーンを担当したSaatchi & Saatchi社の創業者を並べて展示することで、両者の関係をあらわにした。93年には現代美術の祭典として知られるヴェネツィア・ビエンナーレに「ゲルマニア」を発表。建物の入り口にヒトラーの写真とマルク通貨を掲げ、内部の床を叩き壊すと、この展示でハーケは金獅子賞(優秀賞)を受賞している。
また、00年にはドイツ連邦議会の修復に伴う依頼を受けて、「DER BEVOLKERUNG: 居住民に」を発表している。この作品でハーケは中庭に“ドイツ国民に”という言葉を表す“DER BEVOLKERUNG”と書かれたプレートを設置。当選した国会議員には周囲に自分の選挙区の土を入れさせることで、住民と議員の関係を見出そうとした。