トッズ・グループ社、会長兼 CEO のディエゴ・デッラ・ヴァッレは、伝統に裏打ちされたクラフツマンシップが生み出すもの作りに対しても、母国イタリアの世界的な遺産を守る社会的な責任においても、イタリアヘのこだわりを常に表明している。それは、「メイドインイタリー」「イタリアン・スタイル」という言葉となりトッズのDNAに深く刻まれてきた。
2009年には、イタリアの著名なジャーナリスト、ドナータ・サルトリオが編纂した写真集『イタリアン・タッチ』の製作にあたって、イタリアの各地に住む人々の暮らしを撮影するプロジェクトを支援した。その本には、イタリア人の豊かなライフスタイル、エレガンス、伝統,文化と、トッズが追求する世界が映し出されていた。
グッチ、ヴァレンティノなど数々のラグジュアリーブランドを手掛けたアレッサンドラ・ファッキネッティが、トッズのクリエーティブディレクターに選任された理由は、彼女の身体に流れるイタリア人の血と写真集『イタリアン・タッチ』の世界を知る、皮膚感覚にあったのだろう。
昨年9月に開かれた、初のコレクション発表後、『ヴォーグ ジャパン』のインタビューを受け「トッズにとって、私が真のイタリア人であることは大きな意味をもつでしょうね」とファッキネッティは応えている。そこには、デッラ.ヴァッレ会長が求める「イタリアン・スタイル」を理解し、アップデートするのは自分しかいないという、ファッキネッティの自信のほどが垣間みられた。
■ファッキネッティの感性
初のランウエイショーは、ミラノにある個人宅を思わせるリラックスした空間で開かれた。
ファッキネッティは、イタリアを代表する建築家ジオ・ポンティの色彩と幾何的なフォルム、アヴェドンが撮ったコンテンポラリーダンサー、シルヴィ・ギエムの写真に見る毅然とした女性の美しさ、イタリアのアーティスト、パオロ・スケッジの作品を彷彿させるデザインのアクセサリーやレザーウエアへの応用、アートからインスパイアされた美しいコレクションを披露した。
中でも目を引いたのは、トッズのクラフツマンシップが遺憾なく発揮された、薄くしなやかなレザーを使用したトップ、ドレス、スカートなどのアイテム群だ。更にパンチングを施したレザーは、トッズのアイコンの1シグネチャーをさり気なく取り入れたかのよう。レザーは、布帛アイテムとのコンビネーションの相性も良く、互いの質感を高めあっている。また、ウエアの仕上げに活躍するバッグとシューズも、完璧にコーディネートできる、カラーパレットとフォルムで構成されている。勿論、バッグもシューズも単体としての完成度が高いため、他ブランドのウエアとの組み合わせにも一役買う存在感を醸し出している。
ファッキネッティのクリエーションに見られる、たおやかなカラーパレットとフェミ二ティーに漂う知的なきらめきは、日本女性の感性にもフィットするに違いない。2月19日よりイタリア・ミラノ本店と伊勢丹新宿店でファーストコレクションが世界先行発売される。