伝統工芸を受け継ぐ後継者たちが集ったプロジェクト「ゴーオン(GO ON)」。「中川木工芸比良工房」「朝日焼」「金網つじ」達の3者には、時代のニーズに合わせて変えていくこと、そしてこれまでもそしてこれからも変わらないことは何かを聞いた。
「中川木工芸比良工房」の中川周士氏はこう答える。「私達は代々、水に強い状態が求められる桶を作り続けてきたので、木の繊維によって水に強いところを内側に、弱いところは外側にする技術がある。木の適材適所を活かしたものであれば、形、ディテール、使う場所は問わない」。事実、彼が2年もの歳月を経て生み出したシャンパンクーラー「konoha」は機能美を備えたモダンなシルエット。このシャンパンクーラーは、がドン ペリニオン(DOM PERIGNON)の公式クーラーに選定されている。木桶に込められた「用」と「美」。世界がその価値を認めたのだ。
また京都・宇治で400年前から続く「朝日焼」16代目松林佑典氏は「変わらないことは、お茶の器を作り続けること。それ以外はどこを変えてもいいと思う」と答える。実際、デンマークのデザインユニット「OeO」のトーマス・リッケとのコラボレーションでは、モダンなシルエットと色彩のティーポットやカップを製作した。そこには、代々受け継がれてきた技が生みだす上品さが備わっている。GO ONについて松林氏は「物づくりにこだわるメンバーと真剣に話し合えることで、自分の次に向かう動機付けになる」と述べる。
「金網つじ」の辻徹氏は「変わらないのは、脇役の品格という理念」だという。京都名物の一つである湯豆腐おいて、豆腐をすくう金網は脇役ではあるけれど、丁寧で美しい金網だからこそ、場の雰囲気を損なうことなく、そこに佇む。それが脇役の美学だ。明かりをもたらすランプは部屋にとっての主役だが、その主役も洗練されたシルエットの金網シェードがあってのこと。GO ONのショールームには、手編みの金網をランプシェードに採用した照明が灯り、和室に優しい影を落としている。
GO ONメンバーの言葉に共通するのは「立ち返る哲学」があること。時代の声に答えるべく真剣に悩み、時代の変化に向き合い、試行錯誤を繰り返しながら技を磨き上げてきた先代達から受け継がれたものが、彼らを支えているようだ。古に訊き、そこから新たな道を歩んでいくGO ONの行く先にはどのような未来が見えているのだろうか。
4/5に戻る。
最初に戻る。