六本木・国立新美術館にて12月3日から展覧会「エレガンス不滅論。―ジュン アシダの軌跡と未来にみる、ファッションのひとつの本質―」がスタートした。8日まで。
「ジュン アシダ(Jun Ashida)」創立50周年を記念した本展は、芦田淳の娘である、デザイナー・芦田多恵がディレクションを手掛けた。会場は七つのゾーンで構成。ゾーン1では「エレガンスとは、何なのか?」をテーマに、芦田淳がデザイナーの道を歩むきっかけとなった、カリスマクリエーター・中原淳一との出会いを、3分間のアニメーションに仕立てた。芦田が好み、コレクションでも使用したことのあるイタリアの作曲家・ピエトロ・マスカーニのオペラ「カヴァレリア・ルスティカーナ」の有名な間奏曲がバックに流れる。ここでは、1950年代から現在に掛けての、“ジュン アシダ”ブランドを彩る映像も見ることが出来る。
ゾーン2「エレガンスの条件。」では、ジュン アシダのメゾンを紹介。芦田淳がデザインするところから、アトリエの技術者による製図・仮縫い・縫製・仕上げまでの工程を、手元にフォーカスを当てて撮影した映像が5台のモニターで流される。1990年のカクテルジャケットを筆頭に、テクニックを駆使した代表作3点を展示。ゾーン3「エレガンスの結晶。」では、エレガンスの条件を満たし、メゾンを象徴する作品でもあるウエディングドレスを展示している。
ゾーン4は「エレガンスの記憶。」。芦田淳の愛する物や人、事、転機となった事象を通して、デザイナーの世界観とメゾンのヒストリーを、日本におけるハイファッションの歴史や世相とともに紐解く。女優の浅岡ルリ子や藤原紀香、歌舞伎役者の市川海老蔵など、芦田と親交の深い著名人のビデオメッセージを流す。少年時代のスケッチブックや愛読書、手紙やテニスの試合記録、また師匠である中原淳一のデザイン画や人形も展示される。芦田は過去に子供服を手掛けたこともあり、ここでは貴重なデザイン画と実際に販売された商品も見ることが出来る。天皇家に御用命を賜った際の、直筆デザイン画と写真も披露。
ゾーン5「エレガンス追求の軌跡。」では、半世紀以上にわたる芦田のクリエーションを支える“不滅のエレガンス”を、構築性とクチュール性の融合という観点で構成。アーカイブ作品50点を、「SPIRIT of Jun Ashida」「WEDDING DRESS」「GOLD」「DAZZLING」「PASTELS AND FLOWERS」「ART」「SCULPTURAL」「GRAPHICAL」「FLUID」の八つのテーマごとに展示。幾重にも重ねた立体的なティアードパンツ“ボンブー(R)”や、まばゆい光を放つスパンコールのドレス、彫刻的な曲線を描くティアードドレスなど、造形美を追求した高級既製服達には各時代の躍動感を感じる。ゾーン6「エレガンス、その最新系。」では、ジュン アシダ15SSコレクションのキーアイテムを映像でプレゼンテーションする。
ゾーン7「エレガンスの、可能性。」は、芦田淳オリジナルの中心をくり抜いたドーナツ状のストール“コンパス(R)”の世界。世界で活躍する、デザイナー、クリスチャン・ラクロワ(Christian Lacroix)とプロダンサーTAKAHIROによる、コラボレーションを展示。ジュン アシダで経験を積んだラクロワは、コンパス(R)を使ったフューシャピンクのドレスを製作。蘭のコサージュをあしらい、芦田との作業の思い出としてリボンを飾り付けた。TAKAHIROは、コンパス(R)を纏いパフォーマンスをする映像を披露。
会場には、芦田淳の人生哲学を、メッセージとして随所に掲出。展覧会の最後は、アーティスト・草間弥生の特別寄稿「ファッションについてのメッセージ」、服飾史家・中野香織と芦田多恵のメッセージで締めくくられる。
芦田多恵氏は「父が何を見てきたかを客観的に捉え、未来を見出すための展示にしたいと思った。これまでかかわってきた外部の方とも一緒に作り上げた、ジュン アシダの本質を辿る展覧会。過去を振り返ることを嫌う父なので企画にはかかわることはなかったのだが、今日この展覧会に訪れ、涙する父の姿を見て改めて歴史の深さを実感した」と話す。
【イベント情報】
エレガンス不滅論。―ジュン アシダの軌跡と未来にみる、ファッションのひとつの本質―
会場:国立新美術館3階講堂
住所:東京都港区六本木7-22-2
期間:12月3日から8日
時間:10:00から18:00まで(金曜日は20:00まで)
入場無料