ニューヨークのホリデーシーズンは、街が魔法にかけられたかのような高揚感で満ちる時。街を彩るウィンドウディスプレイはクリエーターたちが創造性を発揮する絶好のチャンスといえる。次なるトレンドやムーブメントが生まれる根底には、何か懐かしくも、何か新しく、古さや退屈を感じさせない発想がある。
■Saks Fifth Avenue & Lord & Taylor
ニューヨークはマンハッタンの中心エリア、ミッドタウンの5番街をダウンタウン方向へと歩く。高級デパートやラグジュアリーブランドだけでなく、ハイエンドカジュアルブランドの路面店も見かけるようになり、壮大な物語のような世界観を表現したものや心にそっと寄り添うような温かみのあるものなど、ストーリー性のある面白いウィンドウディスプレイに目を奪われる。
50丁目5番街の老舗高級デパート、Saks Fifth Avenue(サックス フィフス アヴェニュー)。季節毎の豪華なディスプレイで知られるが、今年のホリデーシーズンは “The Winter Place” と化し、建物正面の外観には氷のタワーや尖塔に輝くクリスタル、雪化粧したマグノリアのアーチなど宮殿をイメージした立体的な電飾が施され、一定の時間になると音響を伴い始まる光のショーの演出がドラマティック。
さらに、建物正面のウィンドウディスプレイでは世界の不思議といわれる建築物と冬のファンタジーをエキゾチックなテーストでファッショナブルに描写している。
たとえば、「The Frosty Taj Mahal」はインドのタージ マハルにちなんだ作品。愛妻を亡くした皇帝が彼女のために建てたという逸話を素晴らしい愛のかたちの一つとして解釈した。「The Great Wintry Wall of China」は中国にある万里の長城が冬化粧をしたイメージ。「The Sub-Zero Sphinx」は神話的で、古代エジプトのピラミッドの中に凍って遺されたスフィンクスの眠りを覚まさぬよう、女神が冬の厚い雲で覆い守るかのようだ。
向かいにそびえ立つロックフェラーセンター内の商業施設には、現地の人気ショップANTHROPOLOGIE(アンソロポロジー)も出店。ハイエンドカジュアルな衣料品とインテリア雑貨を展開し、くつろいだ雰囲気が漂う。程よいトレンド感があり、洗練された商品構成で幅広い女性層に人気を得ている。クリスマスのデコレーションにぴったりのキャンドルなどが多く揃うこともあり、店内は賑わっていた。
さらに下ると現れる39丁目5番街の老舗デパートが、Lord & Taylor(ロード アンド テイラー)。 “A Few of Our Favorite Thing” 、夢見るようにスウィートなウィンドウディスプレイが並ぶ。クラシックなパリのベーカリーをイメージしたウィンドウは、カップケーキやマカロンなどスイーツでいっぱい。3段ケーキが載ったトレイの下にはベルトコンベアーが2段仕込まれ、数種類のホールケーキが台座の周囲を回転する。隣はジンジャーブレッドの兵隊が一丸となって持ち上げる、ジンジャーブレッドのヴィクトリアンハウス。アイシングを重ねてつくられた建物は窓まわりの透かし細工やフラワーデザインがあしらわれた外観など手の込んだディテールで一見の価値がある。また、スモールウィンドウの可愛らしい世界をのぞきこむのもおすすめしたい。