映画『マトリックス』や『インセプション』などに先駆けてヴァーチャルリアリティによる多層世界を描いたSF映画『あやつり糸の世界』が、16年3月に東京・渋谷のユーロスペースにて公開される。
1973年に製作された同作の監督を務めたのは、ニュー・ジャーマン・シネマの鬼才、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー。鏡を多用した画面設計や電子音とグッド・ミュージックで、“模造の世界”を鮮烈に描き出した。鋭敏な時代感覚と普遍的な主題で社会を挑発し続けたファスビンダーの“幻の作品”であり、68年公開『2001年 宇宙の旅』や、72年公開『惑星ソラリス』、82年公開『ブレードランナー』などの映画史に輝くSF映画の傑作に連なる先鋭的なSF映画作品となっている。また、同作にはゴダールの異色SF作品『アルファヴィル』で主役を務めたエディ・コンスタンティーヌも特別出演した。
舞台は、未来を厳密に予測できる「シミュラクロン」の開発を行う未来研究所。主人公であるシュティラー博士は、そこで奇妙な事態に遭遇する。保安課長のラウゼが忽然と姿を消すと、エーデルケルンという別の人物が保安課長として存在しているのだ。やがてシュティラーは自らシミュラクロンによって仮想世界に入り込むが、仮装世界には消えたはずのラウゼの姿があって……。