茶道のような「引き算の美学」が日本のコーヒーのあるべき姿--表参道コーヒー・國友栄一2/3【INTERVIEW】

2015.03.28

パンとエスプレッソと」での成功経験がきっかけとなり、國友さんはさらにコーヒーに注力。より専門性を深めた「表参道コーヒー」をオープンさせる。趣ある日家屋の古民家の中に2×2mのキューブを設置。念願だったキオスク形式のスタンドで、クオリティーが高く適正価格のコーヒーを追求している。

「駅の売店でおいしいコーヒーが飲めたら最高だよね、ということで行き着いたのがこのスタイル。砂糖の要不要かからはじまり、お好みや気分に合わせて豆の詰め方、味の出し方を調整しながら、お客様の要望に沿う一杯一杯を提供していきたかった」

「表参道コーヒー」では、マシンもあえてお客様に見えやすいポジションにセッティング。お客はコーヒーがホルダーから落ちる様子を見られるし、一方のバリスタも良い緊張感を持って仕事に当たれるという。バリスタが白衣に袖を通しているのもそう。お客様と向き合って豆や飲み方の説明をし、プロファイリングするように好みを聞いて、リクエストに合った最高の1杯を入れる。バリスタだが、カウンセリングという意味が十分過ぎるほど表れているようだ。國友さんが理想とする提供スタイルは茶の湯に通じる世界観があり、1対1で茶をたてるお点前のようなサービスこそ、日本のコーヒーショップのあるべき姿というわけだ。國友さんが「引き算の美学です」というように、紅茶やソフトドリンクといった類もメニューから外し、フードもなし。オープン当初こそ不安もあったそうだが、フタを開けてみれば専門店にしたことが功を奏し、コーヒー好きが集まった。

「バリスタとお客様がコーヒーというある種のコミュニケーションツールを通じて、情報や人脈がつながったりもします。イタリアでは『その町のことが知りたければバリスタに聞け』というくらいバリスタという存在は情報のハブだった。昔の喫茶店からそういう要素はあったのだとも思います」。

國友さんはまた、東京コレクションファッションブランドへのケータリングをきっかけに、雑誌『モノクル』が発信する世界初のカフェ・「モノクル・カフェ」(東京・有楽町)やセレクトショップのコーヒーのディレクションも担当。異ジャンルとのコラボにも成功している。

3/3--最後は、デザイナーやクリエーターの心を射止めた國友栄一さんのコーヒーとその味わいについて。
粂真美子
  • 表参道コーヒーの店内には、キオスク型の2m×2mのキューブが設置されている。
  • 趣ある日本家屋の古民家を改築したもの。一見するとコーヒーショップだと分からないが、平日の午後でも多くの来客で賑わう。ショップの前に立つ、國友さん。
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