「ディオール(Dior)」が14-15AWオートクチュールコレクションを発表。ロダン美術館の庭に特設した円形の会場でショーを開催した。
アーティスティックディレクターを務める、ラフ・シモンズ(Raf Simons)が今シーズンに試みたのは、「モダン」の意味を追求し、近未来から得た着想と、過去を探求することで得た発想を融合すること。
場内の壁面全面に生花(胡蝶蘭)が飾られ、一際贅沢な雰囲気の中に登場したのは、18世紀の伝統的なクリノリンドレスをアレンジした、チュールの骨組みによる軽やかなドレス。オートクチュールの世界では、フルレングスのドレスはショーの終盤に見せることが通常だが、敢えて冒頭で披露したことで強い印象を残した。
その後も実験的な試みは続き、パイロットスーツと伝統的なドレスが融合したシルクドレスや、エドワード7世時代から着想を得た曲線のロングコート、ワークウエアから引用されたジャンプスーツ、カジュアルな雰囲気を醸し出すシンプルなワンピースとスーツ、18世紀の宮廷用の礼服を再構築したシリーズ、50年代からインスピレーションを得たコートのシリーズ、ハンドステッチで仕上げたプリーツのドレスなど、バリエーション豊かに全62体を披露。
本来ならばアナクロニズムに陥る危険性の高いクチュールの世界だが、スポーツウエアやワークウエアの要素を織り交ぜつつ、新しいカラーコンビネーションで構成。また、樹脂製のフリンジや、テクニカルプリーツの縁飾りなど新たな装飾方法を見出し、コレクション全体をウルトラモダンに仕上げることに成功した。
ラフは「モダンさとは何か。まずはそこから考え直し、これまでディオールで使ってきた言語とは間逆の言語から始めたかった。挑戦は、現代のスタイルを非常に歴史的な方向へ持っていくことであり、わざとらしく見えるかもしれない何かに、シンプルでカジュアルなエッセンスをもたらすこと。大事なのはその姿勢だ」と語る。