ファッションヘッドライン(以下FH):雑誌とウェブはメディア側が棲み分けるまでもなく、読者が使い分けることで自然にその方向に進んでいくのでしょうか。
塚本香編集長(以下K):イギリス版『ELLE』はプリントとデジタルの編集部が完全に融合した形をとっています。また、ウェブは週末にトラフィックが減るのが常識となっていましたが、それをカバーするために、週末に合わせた情報の発信を行い、トラフィックが減らないような工夫をしています。イギリスと日本では事情が違いますが、先に進んでいる部分もあるので、参考にすることもあります。この先、もっと紙とウェブが密接にリンクしていくと思います。フランスでもそうだと思いますが……。
ヴァレリー・トラニアン編集ディレクター(以下V):ええ、そうね。ウェブと紙はリンクしている。編集会議は、両方の編集部が共にコンテンツについて話し合っています。ただし、内容は同じでもフォーマットが違うので、ウェブと紙では利用する目的、探している情報も違うということです。
忘れてはいけないことは、15歳から25歳の世代は、ウェブの『ELLE』から始めて、将来的に雑誌を買ってくれるようになるかもしれないということです。
FH:雑誌とウェブ媒体、この二つの媒体の今後のゆくえはどうなるのでしょう。
V:インターネットと紙媒体の読者は利用の仕方やその行動が全く違うの。テレビが登場してラジオの存在を消すことはなかったように、ウェブ媒体が雑誌を全く無くすわけではないと思っています。だけど、雑誌の一番の強みでもあるきれいなビジュアルとコンテンツが充実していないと、ウェブに負けてしまうかもね。
K:ウェブ媒体のビジュアルの完成度は、例えば、ネッタポルテのエディトリアルページを見るとかなりハイクオリティーになっています。今後そうしたものが増える可能性は大いにありますね。でもウェブと紙、どちらを入り口にするかはあまり問題ではないです。
V:我々の使命は、常にクリエーティブな発想で新しいものを作ることであって、決してインターネットを脅威とは感じていないし、むしろ双方で補い合える媒体だと思っています。ただ、インターネットは日々進化しているから、新しいツール・サービスが誕生し新しい展開が始まるかもしれない。今は、情報量の面では魅力的な存在だと思っています。
K:今後はインターネットから入ってファッションやクオリティーの高いビジュアルの世界に触れる人もいるでしょうし、紙とウェブ、どちらのデバイスを選ぶかの違いで共存していけるものと思っています。
V:『ELLE』は、一つのブランドです。ブランドとして選んでくださる方が、紙媒体を選び、その後インターネットをどのように使うのか未知の世界です。なぜならビジネスモデルがまだ確立していないからです。インターネットと紙媒体が共存していくためのビジネスモデルを見つけることも、今後の課題だと思っています。
K:ヴァレリーが言うように、我々は『ELLE』というブランドですから、どんなことを発信していくかが共通のゴールなのです。ブランドをどう守っていくかは共通の課題で、雑誌とウェブが一緒に行っていきます。紙では表現できないウェブならではの動画などの表現は、インターネットで積極的に発信していこうと思います。
FH:ありがとうございました。
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