1/2より続く。
--商品の開発プロセスについて教えてください。
通常、大手スポーツメーカーの開発サイクルは1ターム18ヶ月ですが、「H&Mスポーツ」は約6ヶ月です。そして、2ヶ月に1度新製品を投入する事もあります。僕が昨年7月に入社し、11月には(デザインに)関わった商品が店頭に並ぶ、というケースもありました。ワークフローとしては、毎週月曜日に全世界の売り上げをチェックし、それを元に次の計画を立てていきます。アウトプットに対するフィードバックをすぐに把握できるのは、直営店展開だからこそのメリット。卸しではこうはいきません。商品にはファッションとテクニカルのトレンドを反映させるとともに、オリンピックユニフォームでは選手の意見も積極的に取り入れました。
--テクニカルなトレンドとは?
技術は日進月歩で進化しています。最近のトレンドには、肌への摩擦を軽減するシームレスガーメントやグラフィックを施したメッシュなどがあります。「H&Mスポーツ」では、大手メーカーに負けない高品質の素材や先進技術を使いながらも、直営店展開かつ大量に素材を調達することでコストを削減。手に届きやすい価格で商品を提供しています。環境への配慮の意識も高く、リサイクル素材を積極的に取り入れています。
--売り上げは順調に伸びているのでしょうか?
全体的な売り上げは、コンスタントに成長しています。特にウィメンズに勢いがあります。世界的な健康志向も追い風ですね。健康への意識が高いニューヨークやロンドン、北欧の都市では、日頃から町中でのランニングを目にしていましたが、今ではスペインやポルトガル、イタリアといった南欧でもランニング愛好家が増えている。日本のランニングブームも完全に定着していますよね。市場が日々大きくなっていると実感しています。
--やはり「H&Mスポーツ」のみなさんは、スポーツ愛好家が多いのでしょうか?
そうですね。プライベートでもスポーツをしています。14SSコレクションでは、「自分達のランニングユニフォームがあったらいいね」というアイデアのもと、 “Stockholm Running Club”というロゴの入ったジョギングジャケットを作りました。毎週火曜日の朝は、これを着てみんなで走っています(笑)。僕はランニングの他、ブラジリアン柔術もやっています。
--文化ファッション大学院大学とH&Mの商品開発プロセスを取り入れたプロジェクトを行っていると聞きました。
同校と共同プロジェクト「ストリート・アウトドア・プロジェクト」を行っています。我々が指揮するコンテストで、生徒のみなさんにH&Mでのデザイナーの働き方を実際に体験してもらうことを目的にスタートしました。 これまでロンドンのセントマーチン美術大学などと同様の取り組みを行なってきましたが、アジアの学校と行なうのは今回が初めてです。「20から40歳の都会的な男性に向けた機能的なアウトドアウエア」というテーマのもと全3回の講義を行ない、その中で作品を製作していきます。7月の最終講義に選ばれたファイナリストは、スウェーデン本社でのインターンシップの機会を得ることができます。僕は2回目の講義を担当し、セミファイリナリスト10人それぞれへプレゼンテーションのフィードバック、企画案や製作、タイムマネジメントについて話をしました。
デザイン案は、アジアっぽい凝ったものが多かったですね。僕は東京ほどファッションの振り幅が広い都市は他にはないと思っています。学生のみなさんは、その中から奇抜な部分というかアグレッシブなところを切り取って、デザインに落とし込んでいる印象です。誰がファイナリストに選ばれるのか、今から楽しみにしています。海外から見ると、ファション性の高いスポーツウエアやアウトドアウエアは日本のお家芸。このプロジェクトを機に、その強みを活かして世界で活躍する若手デザイナーが増えるといいですね。