「ヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivienne Westwood)」青山店(東京都渋谷区神宮前5-49-2)で6月9日まで開催中のスペシャルイベント「カオス(CHAOS)」。
店内では、ロンドンのショップ、ワールズエンド(World's End)で取り扱われているタータンチェックのボンデージパンツや過去のコレクションのドレスやシューズなどを展示。英国を代表するデザイナーであるヴィヴィアンの歴史を辿る写真作品も並べられ、インタビュー映像も放映されている。
この企画を担当したのは、ヴィヴィアン・ウエストウッドのメンズライセンスコレクションとアクセサリーデザイナーを手掛けるTheo Anastasato氏。「今回の展示は、丁度今開催中のニューヨーク・メトロポリタン美術館の 「パンク:カオスからクチュールまで(PUNK: Chaos to Couture)」展と同じようなテーマで、そこに独自の視点を加え、過去を振り返りつつ今のブランドの姿勢も伝えられるような内容になっている」と語る。
また、ヴィヴィアンについて、「ファッションは変わったが、ヴィヴィアンは常に社会に対して疑問を投げ掛け、昔と同じエネルギーでクリエーションを続けている。その精神は更に進化し、気候変動や人権問題について積極的に取り組み、文化や芸術、政治にもっと人々が興味を持つようなプロジェクトも行っている。美しい服を作るだけでなくたくさんの事に才能を注いでいるんだ」と話してくれた。
2階で放映されている、ブルームバーグ社によるヴィヴィアンへのインタビュー映像は約20分。ヴィヴィアンが自らの歴史やクリエーション、ビジネスについて語っている。幼少期や服作りを始めた頃の彼女の貴重な写真も紹介される。
彼女は1971年に当時付き合っていたマルコム・マクラーレンとキングスロードに「レット・イット・ロック」というブティックをオープン。1975年にはマルコムとともにバンド「セックス・ ピストルズ」をプロデュースし、一躍、パンクの女王と呼ばれるようになった。
彼女は当時のことを、「当時終わりに近づいていたヒッピームーブメントに反発したいと考えた。その手段としてマルコムが音楽とファッションを選び、私は服を作ることで彼を助けた。彼はそこに政治的なメッセージがあると思っていたし、それは私も同じ。反体制派で古い世代が大嫌いだった」と語る。
しかし、その考え方は途中で大きく変わる。「自分なりの考えが必要だと気づいたの。ある人に、考えがあるならそれに向かって突き進み、更にそれを超えて未来に向かい、自分の考えを伝えなければならないと教えられた」
その後、マルコムと別の道を歩むようになった彼女は、「伝統をもって未来を創る」という現在のコンセプトに移行。歴史的なドレスのディテールや、伝統的な英国素材、サヴィル・ロウのテーラリングテクニックなどを取り入れるようになり、デザインも19世紀以前のヨーロッパ衣装からインスパイアされたエレガントな路線に変わっていく。「ファッションは人生を高めてくれるもの。私はファッションの力を信じている」とその思いを表現する。
さらに、ビジネスについても、「大事なのはクオリティー。会社の主要事業はファーストラインのゴールドレーベルだが、それを支えているのがスピンオフ製品。もしスピンオフ製品がなければゴールドレーベルは今より10倍高くないとやっていけない。ブランド全体を管理することは本当に難しいけれど、努力をし続けたい」と話す。重要なシーン満載のインタビュー映像はヴィヴィアンフリークのみならずとも必見だ。