9月4日から9月9日まで、ウクライナの首都キエフにて、ウクライナ・ファッション・ウィークが開催された。ロンドンやパリに比べると知名度は低く、業界人であっても馴染みは薄いが、今年で21年目という歴史を持つ。ファッション・ウィーク以前に、そもそもウクライナという国に良いイメージを持っていない人は多いかもしれない。一人当たりのGDPが欧州最貧国という数字を出し(2016年)、3年前の政権崩壊以降は内戦こそ避けられたものの、ロシアとの国境に接する東部では治安悪化が強まっている。入ってくるニュースといえばロシアとの領土問題で、ファッションやカルチャーに注目することはあまりなかっただろう。しかし、だからこそ未開拓の地であるウクライナに、新たな才能を発見できるチャンスが潜んでいるかもしれない。
2014年LVMHファイナリストのアナ・オクトーバー(Anna October)や昨シーズンからパリ・ファッション・ウイークに参加しているパスカル(Paskal)、今季よりロンドン・ファッション・ウイークにてコレクションを発表するナターシャ・ジンコ(Natasha Zinko)など世界へと羽ばたくデザイナーも増えている。今期のウクライナ・ファッション・ウィークで、勢いのあるブランドとしてジャーナリストやバイヤーから評価の高かった若手デザイナーに注目してみてほしい。
アナ・オクトーバー(Anna October)
前途したように、LVMHファイナリストとして一気にその名を広げたデザイナーのアナ・オクトーバー。60年~80年代のヴィンテージスタイルを、現代のフェミニティと掛け合わせた新たな解釈で、モダンなスタイルとして蘇らせる。明るいカラートーンのコットンやシルク素材を使用したドレスがブランドのシグネチャー。プレゼンテーション形式で披露した今季のコレクションは、「より強い現代女性へ向けてデザインした」と語る。色味こそ強めのレッドやブルーのカラーブロックだが、パフスリーブやラッフルの裾など、ディテールで甘さを加えた。大人も着られる可愛い服として、バイヤーからの支持が高かった。
アントン・ベリンスキー(Anton Belinskiy)
アントン・ベリンスキーもLVMHファイナリストとして注目を浴びたデザイナー。ウクライナのカルチャーとスポーツウェア、ストリートウェアからインスパイアされたウェラブルな日常着を生み出す。今季は、ウクライナの不安定な情勢を反映してか、“政治家の夏休み”をテーマに、ハワイアンプリントが多用された。海パンにレザージャケット、デフォルメされたシャツドレス、水着のルックもあればダウンを羽織ったルックも登場し、ショーを終えても全体像が掴めず違和感が残った。「ソビエト連邦崩壊直後の人々の悪趣味なスタイルがブランドのコンセプトで、コレクションを理解して噛み砕けなくてもいい」のだと教えてくれた。彼に対しては、“違和感”は最高の褒め言葉になるようだ。
クセニア・シュナイダー(Ksenia Schnaider)
既に日本のセレクトショップでも取り扱いのあるクセニア・シュナイダーは2011年にデザイナーデュオ、クセニア・シュナイダーとアントン・シュナイダーによって立ち上げられた。ヴィンテージデニムを手作業で加工したアイテムがシグネチャーで、パッチワークのトレンチコートや全体にプリーツを施したロングスカートなどデニムのバリエーションを増やした。さらに今季は、ダブルブレストの白のドレスやシャツなどデニム以外のヴィンテージ加工アイテムも多彩。「ソビエト連邦時代から受け継がれるウィメンズウェアを、世代をまたいで引き継いでいきたい」とコレクションに込めた想いを語ってくれた。
2014年LVMHファイナリストのアナ・オクトーバー(Anna October)や昨シーズンからパリ・ファッション・ウイークに参加しているパスカル(Paskal)、今季よりロンドン・ファッション・ウイークにてコレクションを発表するナターシャ・ジンコ(Natasha Zinko)など世界へと羽ばたくデザイナーも増えている。今期のウクライナ・ファッション・ウィークで、勢いのあるブランドとしてジャーナリストやバイヤーから評価の高かった若手デザイナーに注目してみてほしい。