目黒区美術館「日本パステル畫(が)事始め -武内鶴之助と矢崎千代二、二人の先駆者を中心に-」開催

開催日:2017.10.14-11.26
2017.09.28
目黒美術館開館30周年記念「日パステル畫事始め―武内鶴之助と矢崎千代二、二人の先駆者を中心に」が、10月14日から11月26日に開催される。

現在の『ゴンドラ』パステル

顔料を主体とする素材を棒状に固めたパステルは、描く際には粉状となり、ベースとなる紙の上にようやくとどまった状態に。そこから、原色、中間色ともに「美しい直接的な発色」、乾燥時間のない「速写性」という二つの大きな特色が生まれる。時に儚ささえ思わせる豊かな中間色の美しい発色や独特の「風合い」など一般にもその魅力の一端は知られていて、「パステルカラー」という言い方も定着しているが、時に油彩をも駕するような、本来の多彩な描写の可能性が広く知られてきたとは言えず、パステル類から派生して教育用途で親しまれている普及的な画材と混同されることも少なくない。

本展では、そんな明治期に伝えられた画材のひとつ“知られざる画材、パステル”に魅せられて多くの作品を残した二人の近代日本の画家、矢崎千代二と武内鶴之助を中心に紹介する。

豊かで繊細な色彩を緻密な作品のなかに活かしきった武内、世界各地のいきいきとした情景を、速写を武に描いた矢崎、パステルへの取り組みは異なるが、二人がそれぞれ研究や探求を重ねて生み出した多彩な表現はパステルという画材の幅広さと奥深さを如実に示している。そして、二人の個性的な試みの数々と彼らが関わったパステルの普及活動や、特に矢崎が深くかかわったパステル国産化への道程は近代の日本人が海外から移入された素材や方法論を独自のものとしていった興味深い例でもある。

ほぼ同時代を生きた二人の画家は、これまでも美術館等での紹介があり(目黒区美術館が1993年に開催した武内鶴之助の回顧展『パステルのモノローグ』もそのひとつ)、コレクターはじめ愛好する人々も決して少なくはない。しかし、明治以来の性急ともいえる「日本近代洋画」の歩みのなかで、彼らとその作品の魅力が広く知られることなく今日に至っているのはパステルという画材そのものの我が国における歴史ともどこか重なる。本展を通じてステルという知られざる画材について、そしてともに同時代の人々に愛された二人の画家の画業に改めて注目したい。

矢崎千代二 《リオデジャネイロ風景》 制作年不詳 パステル・紙 郡山市立美術館蔵

武内鶴之助 《風景》 1908~12 パステル・紙 目黒区美術館蔵

【イベント情報】
「日本パステル畫(が)事始め -武内鶴之助と矢崎千代二、二人の先駆者を中心に」
会期:2017年10月14日~11月26日
会場:目黒区美術館(東京都目黒区目黒2-4-36)
時間:10:00~18:00(入館は17:30まで)
料金:一般1000(800)円、大高生・65歳以上800(600)円、中小生以下無料
※障がいのある方は半額・その付添者1 名は無料、()内は20名以上の団体料金
目黒区美術館では開館30周年を記念して区民割引を実施している。目黒区内在住、在勤、在学の証明書を受付で提示すると団体料金扱いとなる(他の割引との併用不可)。
休館日:月曜日
編集部
  • 武内鶴之助 《ロンドン郊外》 1908~12 パステル・紙 目黒区美術館
  • 武内鶴之助 《雲》 1908~12 パステル・紙 目黒区美術館蔵
  • 武内鶴之助 《風景》 1908~12 パステル・紙 目黒区美術館蔵
  • 矢崎千代二 《モンマルトル》 1921 パステル・紙 郡山市立美術館蔵
  • 武内鶴之助 《雷鳴》 制作年不詳 パステル・紙 個人蔵
  • 矢崎千代二 《マルセーユ》 1925 パステル・紙 目黒区美術館蔵
  • 矢崎千代二 《リオデジャネイロ風景》 制作年不詳 パステル・紙 郡山市立美術館蔵
  • 現在の『ゴンドラ』パステル
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