ナデージュ・ヴァンへ=シビュルスキー(Nadège Vanhée-Cybulski)によるエルメス(HERMÈS)が10月2日、パリのシャイヨー宮を会場に2018年春夏ウィメンズコレクションショーを開催した。
全ルックの説明が書かれたブックレットの中には、元パルプのジャーヴィス・コッカー(Jarvis Cocker)によるキーカラーをテーマにした詩が添えられていたのが興味深い。ナデージュ・ヴァンへ=シビュルスキーがデビュー当初より引用しているブルー・ブラック、透明感ある淡いウェット・ブルー、麻縄を思わせるベージュ系のフィセル、深みのあるルージュ H、ダークなウルトラヴァイオレット、そして上品なピンク・グラニテ。その他にベージュに近いバター・イエローも登場し、淡い色と濃い色のコントラストを見せながら、原色系のグリーンやイエロー、レッドなどもあり、実にバリエーション豊かなカラーパレットとなっていた。
今シーズンは「タブリエ(エプロン)」が重要なキーで、機能的なアイテムをいかに現代のワードローブに落とし込むか、がテーマとなっている。直接的にエプロンを想起させるニットドレスやラップドレスなども見られたが、布を大きく取って身体を包むという特性を発展させたアイテムなども目を引いた。
冒頭には今シーズンのメインモチーフともなっているチェックのポンチョが登場。サイドボタンの留める位置を替えることで、様々な着こなしを楽しめるアイテムだ。合わせられたのがスポーティーなテープを袖にあしらったシルクシャツと、ヌバックのショートパンツ。ベルト部分には馬が舌をかまないようにするための舌遊びのモチーフが飾られ、馬具工房をルーツとするメゾンならではの遊び心が感じられる。その他にも、太いベルト状のレザーを編み込んだブルゾンや、スモッキングでギャザーを寄せたワンピース、異素材をパッチワークしたガウンコートなど、様々なチェックの解釈を見せた。今季メインのスカーフモチーフは、“グラン・マネージュ”(Grand Manége)で、馬具を描いたもの。シンプルなブラウスの他に、ラップドレス、グラフィカルなパンツや、水彩画のように淡く描いたプリントのシャツなどが登場。
スカーフモチーフや馬具のディテールなど、エルメスの伝統的なコードを守りつつも、1つのテーマを幾通りにも展開してコンテンポラリーな服に仕上げ、その巧みさに唸らされるコレクションとなっていた。