“謎のステッカー集団“というタグラインと共にメディアで紹介されるブランドのブラックアイパッチ(BlackEyePatch)が、NYやパリやミラノで起きつつあるのと同時代性を感じさせる、既存のファッションにおけるヒエラルキーを逆手にとったランウェイを、Amazon Fashion Week TOKYOの特別プロジェクト「AT TOKYO」で発表した。
会場となったのは2015年に閉場した松濤の観世能楽堂跡。座席だけがそのまま残る会場のシートの上には、沖縄を活動拠点にするバイクスタントチーム「GIMATAI」のステッカーと耳栓が用意されている。爆音注意というアテンションと共に、能舞台の松をグラフィティでペイントする様子をタイムラプスで撮影した映像を背景に2018年春夏コレクションがスタート。
いきなりカスタマイズされたバイクが爆音で登場。ハードなバイクスタントは2014年にマルセロ・ブロン カウンティ・オブ・ミラン(MARCELO BURLON COUNTY OF MILAN)がモトクロスバイクを夜空にダイビングさせたデビューや、フィリップ・プレイン(PHILIPP PLEIN)の派手な演出を思わせる。スケートボードでトリックを披露するクルー、暴走族という日米のユースカルチャーを交互に挟みながら、ストリートモデルを含め男女のモデルがウォーキング。コレクション自体はナイロンパーカー、トラックパンツ、ネオンカラーのフーディー、ルーズに垂らすGIベルト、ナイキエアフォースワンなど、スケーターズアイテムをベースにしたシーズンアンセムを、「取扱注意」のステッカー風ロゴをポイントにコンパクトな構成。
「HIPHOPスターがファッションや社会に及ぼしている影響力を日本で説明することは、アメリカでジャニーズの魅力を説くのと同じくらい難しい」。
東京で働く海外ブランドのマーケターとの会話だが、現在のハイファッションブランドの人気の浮沈に、ラップのリリックやPVが大きな影響を与えていることは、あまり日本では伝わってこない。
エイサップ・ロッキー(A$AP Rocky)、ビッグ・ショーン(Big Sean)、ウィズ・カリファ(Wiz Khalifa)などのラッパーや、ジャスティン・ビーバー(Justin Bieber)がコンサートで着用する画像がインターネットで話題になり、ドーバー ストリート マーケット(DOVER STREET MARKET)などで扱われつつも、これまで全貌が明らかになってこなかった同ブランド。会場外には、”ウエッサイ(WEST SIDE)”スタイルのアメ車も並べられ、ブランドの背景もプレゼンテーションされた。
これまで行政のイベントがフォローすることのなかった新しいストリートシーンが、東京ファッションウィークという表舞台に登場した意味は大きい。
Text: Tatsuya Noda