ファッション業界にとって、2018年最初のビッグサロンとなる第93回ピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTI IMMAGINE UOMO93)が1月9日から4日間、イタリア・フィレンツェのフォルテッツァ・ダ・バッソで開催された。
2018-19年秋冬シーズンのトレンドを占う同イベントの今回のテーマは「PITTI LIVE MOVIE」。メインパビリオンの広場は撮影所風に設えられ、会場の館のテーマを映画風にビジュアル化したビルボード、チケットブースなど“SNS映え”する会場デザインで、年2回のメンズファッションのお祭りを楽しもうという来場者の熱気はこれまで以上だ。
ファッションスナップ常連のピッティピープルも地元イタリア、ヨーロッパだけでなく、今やアフリカ、オセアニア、北欧、東欧、アジアに広がり、雑誌の編集者、ブロガー、バイヤー、メーカーなど、グローバルに交流を深めるサロンへとすっかり変貌した印象を受ける(会場内のファッションスナップは追って掲載)。
期間中は3日目が小雨となった以外、例年より比較的暖かな気候にも恵まれ、4日間合計でバイヤーは前年1月より2.5%増加し約2万5,000人、合計で3万6,000人の来場者を記録。特に今回ロシアとともに、ポーランド、チェコ、ルーマニアなど東欧からが大きく増加、バルカン諸国(セルビア、スロバニア、クロアチア、エストニア)の伸びも目立った。
今回ゲストデザイナーに招聘され、メインプログラムとなった高橋盾(アンダーカバー/UNDERCOVER)と宮下貴裕(タカヒロミヤシタザソロイスト./TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.、以下ソロイスト)のジョイントショー(詳報は後日掲載)の影響からか日本人が前回比3%増となり、海外からの国別来場者数はドイツを抜いて1位になった。
会場構成はメンズマーケットの変化に対応して、前回の6月展から既存のセクション、ブースなどの入れ替えが行われたが、今回は新たに「ATHLUVERS」というプロジェクトをスタート。イタリア・ビエラの繊維メーカーREDA社がスポンサードしてイサオラ(ISAOLA)、ダイン(DYNE)、GR1PSなどの若手ブランドと開発したアイテムを単独のパビリオンで展示。クラシックな天然繊維中心のテキスタイルからテクニカルな素材開発によるアスリートスポーツ及びライフスタイル市場への拡大に向けて、クラシコの聖地で新しい試みがスタートしている。
セントラルパビリオンに出展するイタリアを代表するクラシコブランドはダブルフェイス、ガーメントダイなど手の込んだ素材や加工に取り組むことで、サルトリアーレの姿勢を明確にし、大手ラグジュアリーブランドの製品を手掛ける専業メーカーからトータルブランド化を図る動きは、依然根強い。
ピッティ・ウオモがコンテンポラリーメンズのコンセプトラボとして位置づけている「FUTURE MACHILE」に継続してブースを出展しているCamoshita United Arrows、従来のスポーツウエアの枠を越えた都会的なニュースポーツウエアを集めたIPLAYゾーンにビームス(BEAMS)がチャンピオン(CHAMPION)とのコラボブランドで出展するなど、日本のセレクトショップ勢の来場が増加し、会場内でもバイヤーがスナップの常連組として注目を集めている。
日本のメーカーではバルカナイズ製法のスニーカーで知られるスピングルムーブ(SPINGLE MOVE)、力織機によるオリジナルの生地と1モデル86サイズという世界に例を見ないサイズ展開でジーンズマニアに知られるリゾルト(RESOLUTE)など、メイド・イン・ジャパンを代表するアメカジブランドも継続出展が10回以上を数え、確実に同展での商談実績を重ねている。
「単にメイド・イン・ジャパンということで興味を持たれたり、品質が認められるという時代ではない。日本製で他社と何が違うのかを明確に示せないと難しい。我々はシーズンごとに商品を変えず、ジーパン4モデルだけの商品展開で5年間出展しており、CODという取引条件は最初から一切変えていない。ピッティでも回を重ねて行くに従って、その条件で良いので扱いたいという専門店が増えつつある。コラボの話も多いが、今のところ一切断っている。ファッションブランドというより、工業製品としてのデニムを追求する姿勢を変えるつもりはない」とリゾルトのデザイナー林芳亨氏は話す。
他にも昨年6月に初出展した立体成型のメンズ下着ブランド、トゥート(TOOT)が、初日に会場内でブリーフだけをまとった男性モデルを会場内でウォーキングさせるサプライズを敢行。その様子が現地のTV番組で放送されるなど、カタカナや漢字、アニメ、和柄といった日本ブームのファッショントレンドとは違った面で話題を集めたのも新たなトピックスとなった。
MAKEのパビリオンに出展している香川県に本社を構える手袋の専業メーカー、KURODAは今回ピッティ・ウオモ向けにボロの刺し子の手袋を出品。インディゴやデニムからさらに深く掘り下げた商品が、ジャパンラグジュアリーとして海外に受け入れられるかどうか、各社試行錯誤を重ねているようだ。
また、「第4回TOKYO FASHION AWARD」を受賞したボディソング(BODYSONG. )、クオン(KUON)、ソーイ(soe)、ディガウェル(DIGAWEL)、チルドレン オブ ザ ディスコーダンス(Children of the discordance)、エフ シーイー(F/CE.®)の6ブランドがTOUCHのゾーンに移動。これまでサルバムや同アワードが展示されてきたUNCONVENTIONALのゾーンには中国の8ON8や台湾のIN DICE STUDIOや北欧からの若手ブランドがブースを構え、ラグジュアリーなアンダーグラウンドスタイルを提案するゾーンに、日本の新興ブランドの姿が見えないのが気がかりだ。
Text: Tatsuya Noda