終わりなきエルメスの道【2018-19秋冬メンズ】

2018.02.01
Photo: Jean-François José
ヴェロニク・ニシャニアン(Véronique Nichanian)によるエルメス(HERMÈS)が1月20日、元々はドミニコ会の修道院や仏陸軍の火薬庫として利用され、2022年からはパリ政治学院の校舎となるアルティーユリー館を会場に2018-19年秋冬メンズコレクションを発表。回廊のオープンスペースに篝火を置いて、その合間をモデルが歩き、コレクションテーマである「オープンエア」と呼応する演出で見せた。

アウトドアでの着用を想定し、暖かく、たっぷりとしたボリュームのアイテムが主流。そしてエルメスの2018年の年間テーマとなる「Let's Play」を意識し、既成概念を壊す遊び心あるコーディネート・色合わせ・素材使いをしている。色味は鉱物から引用したナチュラルカラーが中心で、コバルトやグリーンが印象的だったほか、ピンクやパープルなどの美しい発色の差し色が見られた。

スタイリングとしては、スタンドカラーシャツにニットを重ね、コートブルゾンを羽織るというレイヤードがメイン。コートやライダースには暖かさを強調すべくムートンが用いられている他、メゾンの技術力の高さを漂わせるレザー使いが目立っていた。そのレザーも、起毛繊維を植え付けてモチーフを描いたアイテムも見られ、常に新しい素材を取り入れる姿勢を崩していない。定番となりつつあるマクロヘリンボーンのテクニカル素材“トワルブライト”も、ブルゾンやジレなどに用いられ、独特の光沢と質感を放ち、コレクションに華を添えていた。

ニットやバッグで見られた、山間を通る高速道路を描いた「エンドレスロード」は今季のキーモチーフ。それは、1シーズンだけで消費されるのではない、永続的な服をデザインしているというヴェロニク・ニシャニアンのデザインに対する姿勢を象徴しているかのよう。そして今年は、ヴェロニク・ニシャニアンがアーティスティック・ディレクターに就任して実に30周年という節目の年。移ろいやすい今日のファッション業界におては非常に稀なケースである。その長きに渡る道のりと「エンドレスロード」がイメージとして重なり、長く続く関係性を築き上げることこそが、エルメスというメゾンを唯一無二のものにする要素となっているのかもしれない、と思わせたのだった。
Tomoaki Shimizu
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