ファッションにおけるルールや思い込みを一旦排除する、というこのブランドにおける冒険がシーズンを重ねるごとに明らかになってきている。明らかなコンセプトはブランド名に冠されたアメリカ西海岸のスケーター文化がベースにあるだけで、そこにオンされるカルチャーやアイデアにボーダーはない。そのマーケティングの正しさは、世界各都市で巻き起こったルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)とシュプリーム(Supreme)の社会現象が証明している。
パーム・エンジェルス(Palm Angels)がミラノファッションウィークメンズ3日目、1月15日に2018-19年秋冬コレクションを発表した。ミラノで3回目のショーとなる今回は、会場内にレーザーを張り巡らせ、SFチックな演出。前シーズンの近未来的な荒れ地の工事現場から、屋内に場面転換という、デザイナーのフランチェスコ・ラガッツィ(Francesco Ragazzi)らしいストーリーテリング。スタッズが突き出たロシアの防寒帽のモデルに目を奪われるが、“クール”なアイテムが続々と登場した。
今シーズン、ラガッツィが衝突させたのはパンクとウエスタンルックだ。つい関連づけたくなるが、おそらくザ・クラッシュ(The Clash)のジョー・ストラマー(Joe Strummer)がウエスタンシャツを着てレゲエをやったのとは関係が無い。
タータンチェック、スタッズといったパンクのアイコンをウエスタンのアイテムに移植。シャツのヨークには、スタッズを打ち込んだレザー、そのアイデアはコーデュロイやグレンチェックのジャケット、チェスターコート、ベロアのジップアップブルゾンなどにも転用されている。ブランドロゴが刻印されたウエスタンバックルは、ベルトだけではなくループタイにまで登場する。
ウィメンズは同様のウエスタンミックスのジャケットにフィットネスタイツ、あるいは宗教画が全面に転写されたドレスや、ピンクのラテックスのシャツとロンググローブ、トラックジャケットのディテールをミックスしたドレスなど、エレガントなアイテムが並ぶ。
男女ともに持たせたポップなプラスティックのバニティバッグ、ナイロンコートやダウンベストに付けられたインダストリアルタグなど、インフルエンサーに向けたモチーフ、アクセサリー使いは見事というしかない。ラグジュアリーストリートという分野を牽引するブランドの影響力は、まだまだ収まりそうにない。
Text: Tatsuya Noda