毎年2回開催される国際的なシューズ見本市「ミカム(MICAM 85)」がイタリア・ミラノで2月11日から4日間開催された。ミラノ郊外の見本市会場、ローフィエラ・ミラノの7パビリオンを使用し、伊国内から761社、海外から603社の計1,364社のシューズ及びシューズ関連メーカーが出展。4日間で約4万5,000人のバイヤー、シューズ業界関係者が訪れた。
コピー商品と偽装表示に頭を悩まされているイタリアのシューズ産業は“メイド・イン・イタリー”を積極的にPRするとともに、違法対策と消費者に向けて偽造品への意識拡大に向けて、会場内でも問題提起をするイベントや展示ブースを設置。イタリア国内だけで年間約60億ユーロ(*1ユーロ132円換算=7,920億円)、靴産業だけで約1,900~2,400万ユーロ(同約250億~320億円)のダメージを受けており、年々問題が深刻化していることから、今回の重要なテーマと位置付けられている。
コンテンポラリーゾーンのプントピグロ(PUNTO PIGRO)やアレックス・バイ・マーキュリー(ALEX BY MERCURY)、ブッテロ(BUTTERO)などのブースには「Full Made in Italy」「100% MADE IN ITALY」と大きくブースに表記され、パビリオン1では本物とコピー商品のラベルや見分け方や、実物の比較などを展示するなど、“偽物対策”は各セクションで今回の展示の重要なテーマとされた。
それは単に経済的な損失だけではなく、子供靴に代表される健康被害にまで言及しており、子供靴ブランドを集めたゾーンでは、“ムッシュ・プラント”の異名を持つクリストフ・グィネ(Christophe Guinet)のボタニカルシューズのデモンストレーションが行われるなど、「フェイクとリアル」のテーマに沿って様々なイベントが行われた。
特に今回、目を引いたのは建築家フランチェスコ・パリアリッチョ(Francesco Pagliariccio )のデザインによるラグジュアリーゾーンのイベントゾーン、ファッションスクエアだ。天井一面に58m×16mの斜行した大型ミラーを設置。床面のハビエル・ヴァイロンラット(Javier Vallhonrat)が撮影した2018-19年秋冬シーズンの「VANITY」をテーマとした今回のキーヴィジュアルを映し出す巨大な“インスタ映え装置”は圧巻で、イタリアデザインらしい会場デザインで来場者を感嘆させた。
さらに同スペースの周りには今シーズンより同展に復帰したチェーザレ・パチョッティ(CESARE PACIOTTI)、サルバトーレ フェラガモ(Salvatore Ferragamo)、エルメネジルド ゼニア(Ermenegildo Zegna)、モスキーノ(MOSCHINO)などが、オープンプレゼンテーションブースとして並び、ブースをクローズして新作商品を通路から見せない出展ブランドが多い中で、人の流れを集めた。
同パビリオンの「MAN」スクエアでは巨大なシューズのオブジェのなかに靴磨きブースを設置。パビリオン4では今回新設された若手のシューズブランドを集めた「エマージング・デザイナーズ」ゾーン(別途記事掲載)に隣接させた「ファンスクエア」が人気。オキュラスリフトを使用したVR体験、ヘアスタイリングサービスなどを行い、バイヤーを集めていた。
全体的に世界最大のシューズ見本市として、デジタル、アナログ、硬軟取り混ぜたコンテンツを実施しているのが印象的。来場者の広い年代層、グローバルな来場者に合わせて、初日には70年代にドナ・サマーをヒットさせ、ダフトパンクとの交流でリバイバルしているプロデューサー、ジョルジオ・モロダー(Giorgio Moroder)がゲストに招かれたDJパーティーが開催されるなど、エンターテイメント性を備えたサロン提案に意欲的だ。
またSNSで話題を集めるミラノ育ちの中国人スシアーティスト、ユジャ・フー(Yujia-Hu)による「シューシ(shoe+寿司)」(正確には「オニギリアート」という名称)が、前回に引き続き今回もゲストとしてライブで靴寿司を披露。ミラノの日本食寿司レストランSAKANAで働くヤングアジアンが作るモスキーノやナイキなどのアイコンシューズは、サーモンと海苔、しゃりで仕上げられ、ストリートテイスト満点。今回は春節祭と重なり中国、香港からの来場者は減少したものの、前回より大きく増えたロシアやウクライナからのバイヤーたちはその場で撮影し、インスタグラムにアップするのを楽しんでおり、MICAMの新しい名物となりつつあるようだ。
Text: Tatsuya Noda